9月に出荷が始まったWindows Millenium Edition(Windows Me)。Windows 9x系列のOSとしては最後の製品になる予定のクライアントOSだ。マイクロソフトが「ビジネスでは使わないでほしい」とWindows 2000への誘導を図っていることから,本欄を読んでいる読者には歯牙にもかけていない方が多いかもしれない。

 だが冷静に見れば,これは「より良いWindows 98」である。新規導入するクライアントのOSにWindows 98を考えるのなら,Windows Meも十分選択肢として価値があるはずだ。

 現に,今でもNECや日本アイ・ビー・エムなどが企業向けとして販売しているデスクトップ・パソコンの2/3はWindows 98を搭載している。その市場に食い込む可能性は高い。そういった観点から安定性や互換性を中心にWindows Meを検証してみた(*)。

バグ・フィックスだけでもありがたい

 まず,安定性・安全性に関して侮れないのがバグ・フィックスという面である。例えばWindows 98には49.7日間連続稼働するとハングアップするというバグがある。またWWWブラウザには多数のパッチが出ている。Windows 98にはInternet Explorer 4.0が,Windows 98 Second EditionにはInternet Explorer 5.0が標準で付属しているが,これらに多くのセキュリティ・ホールが見つかっており,安全に使うにはアップデートが不可欠である。

 Windows 98ユーザーで,WWWブラウザを更新していない人は,試しに「Windows Update」を実行してみてほしい。「重要な更新」の羅列にギョっとするはずだ。Windows 98がプリインストールされたパソコンを買ってすぐに,これらの更新を行うことを考えるならば,最初から新しいバージョンが入ったWindows Meを使う方がとても楽だろう。

 システムの安定性ということでは,システム・ファイルの置き換えをできないようにするSystem File Protection(SFP)の役割が大きい。Windowsディレクトリ下のSystemディレクトリにあるDLLやEXEなど約900のファイルを監視し,アプリケーションのインストーラなどがそれらを置き換えたり,消してしまったときに,元のファイルに戻してくれる。

 もともとDLLには,共通に使う機能をまとめておくことで,ハード・ディスクやメモリの消費量を節約するという目的があった。しかしVisual C++のライブラリなど,多くのバージョンがあって,差し替えると動作に支障をきたすようなことが増え,メリットよりデメリットが目立っていた。SFPはシステムとアプリケーションを分離するという意味で,OSを守る重要な機能になる。Windows 2000にもほぼ同等の働きをするWindows File Protection(WFP)があるが,WFPがオフにすることもできるのに対し,SFPは必ず有効(オン)である。

 SFPは,システム・ファイルを置き換えて働くようなウイルスに対抗する意味でも効果的だ。例えば1999年に一番報告の多かったHappy99(ウイルス業界ではW32/Ska.Aなどと呼ぶことが多い)は,WinSockのモジュールを置き換えて動作する。そういったウイルスにはSFPがあれば感染せずに済む。

 Windows Meはテープ装置などにバックアップを取る機能を省いた代わりに,ハード・ディスクにシステムのバックアップを取る「システムの復元」機能を用意した。これも現実的な策として評価できる。

 「システムの復元」機能が優れているのは,バックアップを作るのが面倒だというものぐさなユーザーにも,ある程度のメリットがある点。バックアップを取ると「チェック・ポイント」が作られるが,まずWindows Meをインストールした時点でチェック・ポイントが一つ作られる。したがってどんなにものぐさなユーザでも,インストール直後の状態には戻れることになる。システム修復ディスクを作っておけば,Windows Meが起動しない状態でもOSを復元できる。

 さらにMicrosoft Office 2000などのインストーラであるMicrosoft Software Installerや米InstallSheildのInstallShield(6.1 Pro以上)を使ってインストールするアプリケーションの場合,インストーラがインストール直前の状態でチェック・ポイントを作成する。したがってインストール後に不具合が見つかったらすぐに,以前の状態に戻れる。

 このほかでは,デバイス・ドライバの安定性を向上させるための目玉となるはずだった「ドライバ署名」の機能もWindows Meには搭載されているのだが,現状ではこれが有効に働く場面はほとんどなく,実質的には気にする必要はなさそうだ。

互換性はおおむね問題なし

 一方,気になるのが互換性。新OSの宿命として,動かなくなるものは多少ある。ただ,Windows 98からWindows 98 Second Editionに移るのと,大差はないというのが大方の評判だ。

 これまでWindows 98に含まれていて,Windows Meで動かないことが判明しているものとしては,Microsoft FAXやPersonal Web Serverがある。また動かないわけではないが,動作が大幅に限定されるのはディスク圧縮のDrive Spaceだ。Windows 2000に移る場合もDrive Spaceで圧縮されているとうまくいかないので,この機能はなるべく使わないほうがよい。

 ウイルス対策ソフトはSFPなどの関係で,Windows Meに対応したものに代える必要がある。またリアル・モードでMS-DOSを起動することができなくなったので,ディスク・ユーティリティでパーティションなど変更するものには注意が必要である。

 ハードウエア関連では,ハイバネーションの機能をOSが用意するようになったので,ACPIに対応している機種の電源まわりで問題を起こしやすい。もっとも,そのほとんどはハイバネーションを使わなければ済む問題である。

 起動を高速にするFast Bootは,それに対応するハードウエアでないと意味がない。Windows Meには,このほかいくつかの目新しい機能もあるが,これら安定性に関する変化と,互換性に関するポイントを正しく理解しておけば無視しても構わないだろう。

 さて,あなたはWindows Meを検討されますか?