最近,メールを送っても「あて先不明」で帰ってきたり,所定のメールボックスに届きはするものの,いつまでも読み出されていないらしいメールが多くなってきた。

 ちゃんと名刺に刷込んであるメール・アドレスに送っているから,大丈夫なはずなのだが,相手のメール・システムが変更となっている,転職してしまっている,メールボックスは生きているものの,メインに使っているアドレスが別のものとなってしまったなどの理由で,相手が読んでくれないという場面に遭遇する。

 なぜこんなことになるのか,自分の例で考えてみよう。私は今から約15年ほど前,関係部署から「こんなの勝手に刷り込んじゃダメですよ~」と叱られながら,社内で初めてメール・アドレスを名刺に刷り込んで,仕事に本格的にメール活用を始めた。日本にはまだメール・サービスはなかったから,最初に刷り込んだのはMCI Mailのアドレスだった。当時,欧米でビジネス用途に最も良く使われていたメール・システムである。

 会社は自前のメール・サーバーなど持っていなかったから,自分でアカウントを取って仕事に使った。特に海外の取材先と連絡を取りあうのに,このMCI Mailは重宝した。その後,必要があって,The Source,Compuserve,しばらく経ってから日経マグロウヒル社(現・日経BP社)の提供する日経MIX,日本のニフティなどのメール・アドレスを名刺に刷り込んだ。さらにAppleLink,Delphi,AOLなどのメールも必要に応じて追加してきた。会社が自前のメール・サーバーを置いたのは,ずっと後になってからのことだ。

 しかし,時代の流れは速い。MCI,The Source,Delphi,AppleLink,日経MIXはサービスを停止した。会社のインターネット・メールを使うことがメインとなったため,ニフティ,Compuserve,AOLなどは転送指定をしてある。しかし転送機能のないサービスには,ときどき気が向いたときにチェックしに行く。個人で使うためのメール・アドレスも数社のプロバイダーに置いてあるし,最近は自分で独自に取った私専用のドメインにもメール・アドレスがある。

 こんな状態だから,昔の名刺を頼りにメールを出されても,いくつかのアドレスへは不達となる。またいくつかの利用頻度の低いサービスだと,メールは吸い込まれたままで返事なし,ということになっているはずだ。

 会社が潰れてしまったり,サービスの利用をやめてしまった場合は「そのユーザーはいません」とエラー・メッセージが返ってくるから次の手が打てる。しかし,転送機能が使えないメール・システムなどの場合,相手の方は「送られたようだ」と認識しながら,何カ月も待つだけの毎日を送ることとなる。

 利用頻度の表示,メール・アドレスの移転先などにまで柔軟に管理できる,世界規模のディレクトリ・サーバーがそろそろ欲しいなあと感じる。

 そんな仕組みいりませんか? そこまですると,逃げたいときに逃げられないじゃないか? そういう意見もありますね。

(林 伸夫=パソコン局主席編集委員)