インターネット・バンキング・サービス無料化への動きが激しくなってきた。

 日本の銀行の中では最も早くインターネット・バンキング・サービスを始めた住友銀行は,年間1500円のネット利用料金を5月から無料にした。ますます激化する銀行間競争に対抗するためだ。住友銀行は無料化に踏み切る前に,期間限定で「初年度年間手数料無料キャンペーン」を繰り広げてきた。しかし,シティバンクのネット利用料金,振込手数料とも無料サービス,三和銀行が3月から始めた「オンラインサインアップ1500円プレゼントキャンペーン」,さくら銀行の現金1000円プレゼントなど競争が本格化するなかで,完全無料化に踏み切った。

 インターネットを通じた個人の銀行取引は忙しいビジネスパーソンにとっては願ってもないサービスだ。クレジットカードの引き落とし金の充当,ローン返済金の振り込み,インターネット通販の料金支払いなど,自宅でほっとしている深夜にサッとできる便利さは,なぜもっと早くこのサービス提供できなかったのか,と恨みたくなるほどだ。米国では20年も前から当たり前のようにやっているのに・・・。

 銀行にとっては,コストを極限まで切り詰めた無店舗営業を広範囲のユーザに対して展開できる大きなメリットがあり,積極的な顧客囲い込みに動きたい。インターネット・バンキングの利用者は先行している銀行でも4万人程度。まだまだ収益を上げるところまではいかないが,24時間人手を介することなく,銀行サービスを使ってもらえれば,必ず利益の出る構造を作り上げることができる。便利さが分かってくれば,最も使いやすい銀行口座に給与振り込みを切り替えよう,クレジットカード引き落とし先を変更しようという動きだって出てくるはずだ。

 ということで,次なる勝負は,具体的なサービス内容と使い勝手となる。実際にインターネット・バンキング・サービスを使ってみると,ところどころ,どうしようもない問題にぶち当たることがある。学会などの会費の納入,通信販売の振り込みなどをする場合,振り込み名義人の前に会員番号を打ち込まなければならないことがある。振り込み手順のなかで,この操作ができない銀行が多い。こんな場合,仕方なくATMまで出向いて振り込み手続きを強いられることになる。

 同一行内の別口座を同時に扱うのも難しいし,金利の変動する各種口座間で資金を移動するのも難しい銀行が多い。なによりも,ブラウザでの操作画面がわかりにくい,資金移動操作中にネットワークが切断されたようなときにどうなるのか,きちんと説明されていないなど,不満が多い。特に日本の銀行の場合,問い合わせ先の電話が無料電話となっていない,24時間問い合わせに答えられる体制になっていないところが多く,いざというときに不安が残る。

 都市銀行9行での電話やインターネット経由の振込件数は今年に入って月間20万件を超え,前年同月比で約4倍のペースとなっている。普及の兆しは見えてきているものの,実際に使ってみると不満が山積みとなれば,本当の意味で一般ユーザに浸透してはいかない。ユーザの率直な声を聞きながら,使い勝手を高めていく努力が求められている。