最近はインターネット経由でさまざまな申請業務ができるようになり,簡便かつスピーディに事務作業が進められるようになってきた。

 海外への物品の発送などもフェデラル エクスプレス コーポレーション(フェデックス)などを使うと,海外向けの輸出申請書などをWWWで登録して,そのままピックアップ依頼と発送ができる。手書きで何回も書き損じていた私としては,こういうサービスが幅広い業種に広がることを期待している。

 ところが,先日,あっけにとられる“事件”に遭遇した。

 妻のパスポート更新申請時期になったので,インターネット経由で申請書が手に入らないかとネットを探した。地元の千葉旅券事務所のWWWページには「申請用紙は旅券事務所,県民センターおよび市区町村役場にあります」と書かれているのみ。こういう申請書類などPDFで置いといてくれよな。

 続いてやったのは写真の用意。小さな写真だし,今の時代,銀塩写真など使うべきではない。なにしろ自慢のディジタル・カメラ(富士写真フイルムのハニカム信号処理432万画素,FinePix 4700Z)が手元にある。

 白バックでしっかりしたライティングを施し,撮影。色の発色も,バランスも最高の出来で,日ごろ街で撮ってもらう証明写真が「できが悪い」といつも文句ばっかりの妻も御満悦の様子。プリンターにはセイコーエプソンのPM-2000Cを使い,紙はエプソン純正のフォト・プリント紙,最高解像度で印刷した。まさに,惚れぼれする仕上がりだった。ところが,翌日帰宅するとふくれっ面の妻の顔があった。

 理由を聞いて唖然とした。「写真の仕上がりに問題があると言われて,突き返された」という。

 そんなはずはないと思いながら,目を5cmくらいに近づけて見ると,確かに,インクジェット・プリンター独特の微細な粒子が見える。しかし,そんなことで・・・。銀塩写真とはそりゃあちょっとは雰囲気が違うかもしれないが,しっかり本人確認ができる十分な品質があると確信できる。

 顔は指定通り真っ正面を向いているものの,体をちょっと斜めにポーズしているのがいけないとも,言われたらしい。オイオイ,アメリカ人のパスポートを見たら,顔を斜めにして笑いかけている写真があったぞ。日本はどうして,こんなにお堅いの??

 お役所仕事はシャーないな,と,撮影に再挑戦。体をまっすぐに伸ばし,緊張してカメラの前に立ってもらった。今度はアンシャープマスクを少なめに,ザラつきが出ないよう,甘めに調整。今度もなかなかきれいに撮れ,奥さん御満悦。

 で,数日後,旅券事務所から帰ってきた妻はまたまたふくれっ面である。

 やはり,「粒子が見えて良くない」と言われたそうだ。結局,写真は旅券事務所脇の写真屋さんで撮り直したそうだ。ここで,業者との癒着の臭いを感じるが,それはまた別の機会に追及するとしよう。

 外務省旅券課では,最近ディジタル・カメラでの申請が増えてきたのに呼応し,99年10月ごろ「ディジタル・カメラだからダメとはしないでほしい」との通達を各都道府県に出したそうだ。しかし現場レベルの担当者は,「ここまでなら良い」という具体的な指針がないため,安全を見込んで,慎重な判断をしている。

 新しい仕組みが生まれたときには,使わせる方策を積極的に喧伝しなくては普及しない。ディジタル・カメラの映像もこの程度なら使って構わないという指針,ディジタル文書での申請はこのような形式なら「OK」と言ってくれなければ,旧弊に縛られがちなお役人は後ろ向きの判断を下してしまう。

 ディジタルで何でも通用するような世界に,早くなってほしいものだ。