日経バイト8月号で,さまざまなネットワークOSを使ってイントラネット/インターネット環境を構築するという作業に取り組んだ。扱ったのは「Windows 2000 Server」「Novell Small Business Suite 5」「NetWare 5.1」「Solaris 8」「TurboLinux Server 6.1」「Red Hat Linux 6.2J プロフェッショナル」の六つのOSである。

 SMB(Small/Medium Business)では専任のシステム管理者がいることは稀であり,ほとんどの管理者が本業の片手間にシステムに取り組んでいる。そこで,今回はただ機能を調べるだけではなく,実際に作業をしてみることによって,各OSのサーバOSとしての使い勝手も調べた。

 詳しくは弊誌を見ていただきたいが,印象に残ったことの一つが,「Linuxは意外に使いやすくなっている」ということである。調べる前はWindows 2000が使い勝手ではダントツではないかと思っていたのだが,実際にはそれほどの差は感じられなかったのだ。

 Linuxはこれまで安くて,安定性も十分であるという定評を得ていたが,半面取っ付きの悪さが問題となっていた。コストがほとんどかからないことからLinuxに魅力を感じても,管理の手間が心配で導入に踏み切れない人は大勢いる。Linuxのブームが始まって2年足らずだが,こういった問題が徐々に解決に向かっていることを実感した。

簡単に進むようになったインストール

 まず簡単になったことの一つがインストールである。今回調べたTurboLinuxとRed Hat Linuxのどちらも,マシンにCD-ROMを入れて起動し,指示に従うだけでインストールが完了する。ハード・ディスクの領域設定といった面倒な作業もほぼ自動的に行われるし,ネットワーク・カードなどの自動認識も問題ない。

 あえていうならば,X Windowの設定だけは旧態依然であり,グラフィックス・チップや搭載しているグラフィックス・メモリをあらかじめ調べておく必要がある。これを除けば,もはやインストールで悩むところはほとんどない。たとえばTurboLinuxの場合は,インストール時に「メール・サーバ」や「オールインワン・サーバ」など目的とするサーバを選ぶだけで,一緒にインストールするソフトも決めてくれる。

各種サーバの設定もGUI対応が進む

 多くの管理者にとって問題になるのはインストールよりも各種サーバの設定だろう。WWWサーバの「Apache」やメール・サーバの「sendmail」,Windows機のファイル・サーバとなるための「Samba」など,Linuxではさまざまなオープン・ソースのサーバが使われており,これらの使いこなしが必要だからだ。

 これらのサーバはそれぞれ設定ファイルを持っている。設定ファイルが標準で格納されるディレクトリもまちまちならば,設定ファイルの記述方法もまちまち。しかも,どの設定ファイルも膨大な項目を用意している。加えて,設定を変えたらそのサービスを再起動する必要があり,設定ファイルに間違いがあると動かないサービスもある。

 なかなか気難しいのだ。こういった項目は従来,すべてテキスト・エディタで記述しなければならなかった。GUIですべての設定が可能なWindowsと比べたときに,使いにくさや分かりにくさが際立っていた。

 今回調べたTurboLinux Server 6.1とRed Hat Linux 6.2J プロフェッショナルは,どちらもWWWブラウザから各種サーバの設定ができるホライズン・デジタル・エンタープライズ(HDE)の「HDE Linux Controller 1.0」をバンドルしている。Red HatはマスタCD-ROM作成時のミスにより,実際には後からHDE社のCD-ROMを入手してインストールしないといけないのだが,TurboLinuxの方は普通にOSをインストールするだけでHDEもインストールされる。これを使うには,WWWブラウザでURLを指定するだけで済む。設定は,ネットワークにつながったWindowsマシンからでも構わない。

 HDE Linux Controllerを使うと,慣れないユーザがまず戸惑うサービスの起動や再起動がワンタッチでできるうえに,各サーバの基本的な設定がWWWのユーザ・インタフェースで可能になる。使うにつれ,設定できる項目が少ないことや,設定ファイルを不適切に書き換えてしまうバグなども見つかったのだが,最初のバージョンとしては水準以上の出来といってよいだろう。この8月末からは大幅に機能強化を果たした2.0の出荷も始まるという。

 Red HatにはHDEのほか,「Linuxconf」と呼ぶGUIあるいはWWWブラウザから設定・管理可能なツールもあるのだが,こちらは各種サーバの設定ファイルの項目をただGUIで書けるようにしただけという印象で,劇的に難しさを緩和したというようなものではなかった。

 このほかSambaにも独自のSWATと呼ぶWWWベースの設定ツールがあり,設定項目の説明もかなり詳しく読める。これにも感銘を受けた。

WWWベースの管理に弱いWindows 2000

 WWWがコンピューティングの中心ともいえる状況になった現在,なまじ分かりにくいメニュー中心のGUIツールを用意されるよりも,WWWブラウザで管理できる方が多くの人にとって馴染みやすい。実は,Windows 2000はさまざまな管理機能を用意するものの,WWWブラウザでの管理だけは弱いのだ。

 正直言って,まだLinuxのWWW管理ツールは発展途上である。不満な点もいくつもある。だが,この改善のスピードはすさまじい。1年後には私が今回感じたような不満点も,ほとんどが解消されているかもしれない。WWWベースの管理ツールが複数あり,競争しているのも好ましい。Linuxのブームは沈静化しつつあるのかもしれないが,製品としては確実に成熟しつつある。