花粉症が心配である。室内の空気清浄機をフル回転させていたら,フィルターを交換せよという警告が出た。機種の型番をメモして近所の大型電気店に出向くと,返事は「このフィルターは在庫がないので取り寄せになる」とのこと。「どれくらい掛かるの?」と聞けば,なんと「2週間くらいです」と即答。おいおい,花粉は2週間も待ってくれないぞ。

 調べてくれた礼を言って,直ちに別の店へ。胸をよぎった不安通りに,どこの店も丁寧の程度に差はあるが,返答は同じ。まったく同じ返事を4,5軒でもらった後,しかたなく再び近所の店に舞い戻ってメーカから取り寄せの注文をした。この間,たっぷり3時間はかかっている。

 それにしても,2週間とは驚愕である。どの店もそんなに時間をかけずに調べて,何気なく「2週間」と返答しているからには,こういう応答は何度も経験したのだろう。花粉が飛び交っている最中に,清浄機からの警告を受けて困っている消費者が,それだけ,こうした愕然とするような回答をもらっているということだ。

 この時節,注文してから2週間も待たせる商品があるのか。それも人気商品でメーカの生産が間に合わないという類ではない。小売店,卸売店に在庫がないというだけで,メーカの倉庫かどこかに在庫は眠っているに違いない。これを注文主のいる小売店の店頭まで届けるのに注文から2週間かかるというのである。エレクトロニック・コマースで購入する仕組みも準備していない。インターネットで米国に本を注文すると3日で届くという時代に・・・・。

 この空気清浄機のメーカはサプライ・チェーン・マネージメント(SCM)の実践企業としても有名な家電メーカだが,先進的な部門の横で,現実は惨憺たる有様だ。

 家電だけではない。パソコンの実態もひどいもの。先日,購入してたった10日目のノート・パソコンに異常が発生した。AC電源の接続部のプラスチックの一部が本体の接合部にはまり込んで抜けなくなったのである。無理すれば電源の供給ができるが,火事にでもなったら大変である。適切な工具があれば,この破損したプラスチックを抜いて,新しいAC電源に代えれば良い。2分で終わる作業だろう。

 修理を依頼すべくカスタマ・センターにどこで直してもらえるか聞くと,センターの方で預かって修理するという回答だ。1週間ほど預からせてくれという。冗談ではない。1週間もパソコンを使うな,というのか。簡単な修理だと言っても,「預かる方法以外にはサービスを用意していない」と,取り合ってくれない。こんな簡単な修理に1週間。

 この国のサプライチェーンは一体,どうなっているのか?

 「顧客本位」という言葉を聞いて久しいが,どうも言葉の意味を誤解していたようだ。