経済産業省は「ITクラフトマンシップ・プロジェクト」を開始する。小・中学生を含む児童生徒に高度なIT教育の機会を提供し,世界に通用する高度IT人材を育成する。7月11日,プロジェクトを実行する15団体を発表した。全国各地のNPOや教育機関が,ロボットやオープンソース・ソフトウエアを通じIT人材の育成に取り組む。

 Linuxがフィンランドの一大学院生が始めたプロジェクトであったように,ITの世界では,個人のイノベーションが技術のパラダイムを大きく変える。そのような突出した才能の有無が,日本のIT産業の競争力を大きく左右しかねない。ITクラフトマンシップ・プロジェクトは「囲碁や将棋の奨励会のIT版」(経産省)。小学生から高校生の児童生徒に,早い段階から高度な技術を学ぶ機会を提供することで「高度なIT人材を継続的に創出できる場を整備する」(同)。経産省はプロジェクトに参加するNPOや教育機関に経費などの支援を行う。使用するOSにはオープンソース・ソフトウエアを推奨している。「ブラックボックスの組み立てで真のエンジニアは育たない」(同)

 28件の応募があり,北海道から沖縄まで全国で15件を採択した。

 教育の素材にはユニークなテーマが並んでいる。北海道のNPO法人 札幌市IT振興普及推進協議会 サッポロバレー E.T.プロジェクトは「空中に浮かぶ機械」を製作する。同じく北海道のNPO法人 北海道SOHO・マイクロビジネス推進協議会は,英語によるロボット組み立てをテーマにする。

 福島県の会津コンピュータサイエンススクール実行委員会は,コンピュータサイエンス サマーキャンプ会津大学2005として3次元モデリング言語「HyperFun」などを素材に実施,中国からも受講生を招く。

 東京都のNPO法人 地域学習センター ゆーらっぷは,小学校5年生から中学3年生を対象に,Linux上で教育用プログラミング言語「ドリトル」を利用した教育を行う。同じく東京都のNPO法人 OCP総合研究所はスーパープログラマーを育てる!プロジェクトとして小学校5年生から中学3年生を対象に,ゲーム作成などのプログラミング研修を実施。慶應義塾大学SFC研究所は日本語プログラミング言語「言霊」をビジュアル言語「Squeak」に組み込み,開発環境をオープンソース・ソフトウエアとして公開する予定だ。

 岐阜県のIT致道館「プラス」は小学校5年生から中学校3年生にロボットのプログラミング研修を行う。エヌ・ティ・ティ ラーニングシステムズは大阪府で高校生向けに携帯Javaアプリケーションの開発を指導する。福井県の永和システムマネジメントは小学校4年生から6年生を対象にロボットを制御するプログラミングの体験学習を行う。

 広島県のケイ・エヌ情報システムは中学校3年生から高校3年生を対象に,Linuxによるインターネット・サーバー構築の実習を行う。鳥取環境大学は平成17年度鳥取県おもしろIT技術館事業として,小学校5年生から高校3年生を対象に,ミニカーの作成と制御プログラム作成を体験させる。財団法人 九州システム情報技術研究所は,小学校6年生から高校3年生に向け,CPUシミュレータを用いた実験授業を行う。

 福岡県のJAPAN ROBOTECH ふくおかロボット・高度ソフトウェア教室は小学校5年生から中学校3年生を対象にロボットの製作と制御プログラムの習得を行う。沖縄県のNPO法人フロム沖縄推進機構 オープンソースを活用したNetwork Master 人材育成事業は,ネットワーク技術を中心としたIT技術を実機演習などで習得させる。名護総合学園は「ジュニア体験(ホームセキュリティーシステム構築)」事業として,ICやセンサーなどのデジタル部品を使い,家電製品を制御する実習を行う。

(高橋 信頼=IT Pro)

◎関連資料
平成17年度 「ITクラフトマンシップ・プロジェクト」の選定結果について(経済産業省)