USBメモリーにLinuxを格納したシン・クライアント製品が相次いで発売される。NTTコムウェアとノベルは,USBメモリーにSUSE LinuxベースのOSを格納したシン・クライアントを製品化,2005年8月発売を目指している。Berry OS Japanは,Berry Linuxをベースにした製品の2005年6月発売を計画している。

 USBメモリーにLinuxを格納したシン・クライアントのメリットは,セキュリティ向上と管理コスト削減である。

 シン・クライアントは,必要最低限の機能だけを備え,クライアント側にデータを保存しないようにすることや記録メディアへのアクセスを制限することが容易。そのためデータの持ち出しや,クライアント機器の紛失などによる情報漏洩の防止に有効とされる。

 USBメモリーにOSを格納する利点は,パソコンに装着して起動することで,普通のパソコンをシン・クライアントとして使用することができる点だ。シン・クライアントとして利用する際だけUSBメモリーを差し込んでおけばよく,USBメモリーを抜いて再起動すればまた通常のパソコンとして使用できる。

 OSをCD-ROMに格納しCDから起動する1CD Linuxをシン・クライアントとして使用する方法もあるが,USBメモリーを利用することで,簡単に持ち運びできる。またUSBメモリーであればバージョン・アップなどの更新も容易だ。このところのUSBメモリーの低価格化もこのような製品が現実的になった要因だ。

 NTTコムウェアとノベルの製品は,Novell SUSE LinuxをベースにWebブラウザ,Windowsターミナル・サービスのRDP(Remote Desktop Protocol)クライアント,CitrixICAクライアント,オープンソースの.NET実行環境Mono,およびJavaに搭載アプリケーションを絞ったもの。パソコンのハードディスクや,その他の記憶メディアにアクセスできないようにして情報漏洩を防ぐ。PPTPやL2TPといったVPNプロトコルもサポートする。

 Berry OS Japanは,Berry Linuxをベースに,Webブラウザ,メール,オフィス・ソフトだけに機能を絞ったもの。Berry Linuxは,Red Hat Linuxをベースにした1CD Linux。セキュリティ設定やデザインのカスタマイズを有償で請け負う。USBメモリーのほかCF(コンパクト・フラッシュ)カードも媒体として想定する。価格は,USBメモリーで2万円から,CFで2万7000円からとなる予定。

 無償で配布されているUSB起動Linuxもある。日本電子専門学校は,1CD LinuxのKNOPPIXをベースに,64MバイトのUSBメモリーに格納して起動できるようにしたバージョンを開発し,配布している。iPod shuffleをUSBメモリーとして使用し,起動できるようにしたバージョンも開発し配布している。

 日本電子専門学校 コンピュータネットワーク研究科では,2004年11月から,実習用パソコン約40台を,CFカードからKNOPPIXを起動するシン・クライアント端末形態で利用していく。パソコンにはハードディスクを装備していない。2004年春から,CD起動の形態で利用していたが,CFカードに切り替えることによって,OSのバージョン・アップ作業が簡単になり,TCOが削減できたという。また,OSやアプリケーションの起動時間も短縮された。

 USBメモリーではなくCFカードを採用した理由は,USBが簡単に取り外せるため紛失しやすいこと,またCFカードでは特別なドライバ・ソフトが必要ないことという。ただし,デスクトップ機の場合,CFカードを読むためのリーダー/ライター装置が必要になる。

(高橋 信頼=IT Pro)