オープンソース新会社CEOに就任予定のRao Papolu氏
 SRAは2005年5月10日,米国に子会社を設立し,オープンソース・ソフトウエア事業の拠点を米国に移すと発表した。新会社は6月に設立し,SRAの世界各地の拠点におけるオープンソース事業を統括する。日本のオープンソース専門部門は新会社の日本支社となり,サポートや教育,技術者認定試験などの事業を現在と同じ体制で継続する。

 「世界を市場にするために拠点を米国に移す。オープンソースにフォーカスするためにオープンソースに特化した新会社を作る」(SRA 代表取締役社長 鹿島亨氏)。新会社では,オープンソース・ソフトウエアをベースにした製品の販売と,コンサルティングやサポートなどのサービス提供を行なう。

 現在,SRA全体の売り上げは約330億円程度で,そのうち60億円~65億円がオープンソースに関連する売り上げだという。ただし,大部分はオープンソース・ソフトウエアを利用したシステム構築が占める。

 新会社で狙うのは,システム構築ではなく,あくまで「オープンソース・ソフトウエアをベースにした製品とそれに付随するサービス。システム構築はSRA AMERICAが担当する」(鹿島氏)。しかし,オープンソースをベースにした製品の販売で利益を上げている企業は多くない。オープンソース・ソフトウエアを組み合わせて検証するだけでは付加価値は限られる。クローズドな独自機能を付加すると,オープンソースの本来の利点が失われかねない。

 SRAは,オープンソースPostgreSQLをベースにサポートなどを付加した商用版データベース「PowerGres」を日本で販売しており,2004年から海外でも発売している。またSRA AMERICAは米気象局(National Weather Service)からPostgreSQLの訓練や技術監査を受注している(関連記事)。SRA AMERICAでは米気象局での移行プロジェクトのため,InformixからPostgreSQLへの移行ツールを開発している。これらの実績をもとに,政府機関,大学などの教育機関,金融,通信業などに,オープンソース・ソフトウエアをベースに,業種特化したサーバーおよびデスクトップのソフトウエアと関連サービスなどを提供していく方針。

 新会社の名称は未定だが,SRAの文字が含まれる見込み。「SRAは,世界のオープンソース・コミュニティと良好な関係を結んでおり,オープンソース・コミュニティでの知名度がある」(鹿島氏)。

 新会社のトップには,現SRA AMERICA 副社長兼COOのRao Papolu氏が就任する。新会社は初年度1000万ドルの売り上げを目標とする。「3年後に30億円(約3000万ドル)の売り上げを目指す」(鹿島氏)。本社は米国サンフランシスコ。米国ニューヨーク,オランダのアムステルフェーン,英国のロンドンポーランドのワルシャワ,インドのバンガロール,中国の大連にも拠点を置く。

(高橋 信頼=IT Pro)