XMLに関する知識やスキルの認定制度「XMLマスター」が,この6月に改定され「XMLマスターV2」としてスタートする。改定の骨子は,「認定試験の内容を,より実践的にしたこと。初級者向けの『ベーシック』と上級者向けの『プロフェッショナル』という認定の枠組みはそのままに,単純な知識の有無を問う設問を減らして,受験者に“考えさせる”実践的な設問の比率を増やした」(試験の事務局を務めるインフォテリアの穴沢悦子教育部部長)。

 ベーシックについては,XMLデータの構造(XMLスキーマ)を定義する「XML Schema」や,XML文書を異なるスキーマを持つ文書に変換する「XSLT」など,XML関連の技術仕様を理解するための問題が,新たに加わった。一方のプロフェッショナルは,XMLや技術仕様を駆使してシステムを構築するための知識を認定する問題が加わった。具体的には,XMLデータにJavaなどのプログラムからアクセスするためのAPIである「DOM」や「SAX」,XMLスキーマの設計,各種の技術使用を組み合わせたシステムの設計・構築などの知識を問う。

 XMLマスターV2の難度は,従来版に比べて全体的に上がっている。特にプロフェッショナルは,長文のXMLデータを読解したり,与えられた条件に合致するXMLスキーマを選ぶなど,高度な知識が必要。設問はすべて選択式だが,問題文はもちろん選択肢もXMLのコードになっている設問が多い。「少なくともシステム開発に3年以上の経験を持つITエンジニアが対象になる」(穴沢部長)。ベーシックにしても,初級者向けとはいえ,XMLを使ったシステム構築の経験が必要だろう。

 XMLマスター試験を運営するXML技術者育成推進委員会では,6月1日の試験開始に先行して,現在モニター試験)を実施中。「モニター受験者からは,出題範囲や難易度について適切との評判を得ている」(穴沢部長)。

 インフォテリアの平野洋一郎社長は,改定の狙いをこう話す。「ここ1~2年で,XMLはとても気軽に使われるようになった。XMLマスターを改定したのは,XMLの普及に合わせて,より実践的な能力の認定が求められるようになったためだ」。

 特に顕著なのが,個人向けサービスで広く利用され始めたことだ。代表例がブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)である。これらはいずれも,XMLを利用して成り立っている。携帯電話や情報家電でもXMLデータを利用できるようになるなど,XMLの活躍するフィールドは大きく広がりつつある。

 XMLの広がりは,企業情報システムの分野でも同様。当初はBtoB(企業間の電子商取引)におけるデータ・フォーマットという位置付けだったが,企業の財務情報をXMLで記述するための国際標準仕様「XBRL」や,音声合成システムを構築するための「VoiceXML」など,BtoB以外にもXMLの用途は拡大している。

 平野社長は,「XMLとは何か?という時期は,とうに過ぎた。ITエンジニアにとって,XMLを理解し使いこなすための知識は,もはや必須。この先,長期間にわたって役に立つ,すべての基本となる“ストック”の知識になるだろう」と話す。

(玉置亮太=日経ITプロフェッショナル)