「2001年設立当時に目的としていた,シングル・サインオン(SSO)などを実現するための技術仕様やガイドラインは固まった。だが,やるべきことはまだたくさんある。より多くの企業に実装してもらうよう働きかける必要があるし,仕様も拡張する必要がある」——。Liberty Alliance ProjectのExecutive DirectorであるDonal O'Shea氏は3月9日,IT Proの取材に対して,Liberty Alliance Projectの現状などについて語った。

 Liberty Alliance Project(以下,Liberty Alliance)とは,ユーザー認証技術の標準化団体。米Sun Microsystemsなど33の企業/団体が集まり,「インターネットにおけるユーザー認証に関するオープンな技術の開発/普及を目指す」として,2001年9月に設立された(関連記事)。以下,同氏の発言内容の一部をまとめた。

やるべきことはまだまだある

 Liberty Allianceの進捗状況には満足している。技術仕様の標準化は予定通りに進んでいるし,仕様の実装方法に関するガイドラインなども公開できている(関連記事)。

 技術について言えば,設立当初考えていた技術仕様は完成している。例えば,複数の企業(プロバイダ)間で連携したユーザー(アイデンティティ)管理を行うための基盤となる仕様「Liberty Alliance Identity Federation Framework(ID-FF)」を2002年7月に公開し,2003年1月には改訂版を公開している(関連記事)。

 同仕様を実装した製品は多数市場に出ている(関連記事1関連記事2)。また,異なるベンダー間の相互接続試験も実施している(関連記事)。Libertyの仕様を使って商用サービスを提供しているプロバイダもいくつかある(関連記事

 “Project”という名前の通り,目的が達成できれば解散するつもりだった。だが,まだ解散するわけにはいかない。新しい問題が次々出現するためだ。同Projectのやるべきことは,まだまだある。

 例えば,2001年ごろはインターネットは利便性が強調されていたが,現在ではフィッシングといった「アイデンティティ盗難(Identity Theft)」が横行し,“危険な場”になりつつある。このため,当初考えていたよりもセキュアな技術が要求される。利用環境も多様になっているので,仕様を拡張する必要がある(関連記事)。

普及が重要,日本企業も参加を

 また,より多くの企業にLiberty Allianceの仕様を採用してもらう必要がある。そのためには,Liberty Allianceの仕様の有用性を,より多くの企業に知ってもらいたいと考えている。2004年10月時点で161の企業/団体がLiberty Allianceに参加しているが,もっと多くの企業に参加してもらいたい。

 現在でも多数の有名企業に参加してもらっているが,分野的および地理的に偏りがある(関連記事1関連記事2関連記事3)。例えば,分野としてはITに偏っており,金融や政府系などは少ない。また,欧州ではイタリアやドイツの企業が少ないし,アジアやオーストラリアからの参加企業も少ない。特に,私としては,日本企業に参加してもらいたいと考えている。

 そのために,Liberty Allianceでは,広報活動を積極的に行っている。現在の参加企業であるNECなどのスタッフの力を借りて,日本語サイトを充実させている。また,2004年10月には,普及のためのイベントを実施した。さらに,今回の来日の目的の一つが,日本企業の参加を募ることである。日本は重要な市場である。ぜひ参加してもらいたい。

Microsoftにも参加してもらいたい

 2001年の発足当時,Liberty Allianceは米MicrosoftのPassportとよく比較されていた(関連記事)。ほとんどの企業がアイデンティティ管理の重要性を認識していなかった当時,その重要性に気付き,解決策を求めた同社の考えは卓越していた。しかしながら,ユーザー情報を1カ所に集約させるというコンセプトはよくなかったと思う。複数の企業(サイト)で連携して管理すべきだろう。

 同社の動きを見る限りでは,同社も「アイデンティティ管理は連携して実施すべき」という考えにシフトしているようだ。同社とLiberty Allianceの2つのソリューションがあってもかまわないとは思うが,コンセプトが同じなら一緒にやったほうがよいだろう。そのほうが,ユーザーも混乱しない。Microsoftにも,Liberty Allianceに参加してもらいたいと考えている。ただ,現時点では,同社には「その気」はないようだ。

◎参考資料
Liberty Alliance Project
Liberty Alliance Project日本語ページ

(勝村 幸博=IT Pro)