「金融業にはリスク管理など膨大な潜在計算需要がある。スーパーコンピュータはLinuxを搭載したグリッド型が主流になっており,こうしたLinuxスーパーコンピュータを必要に応じてオンデマンドで提供するビジネスが大きな市場になる」――ニイウス代表取締役 末貞郁夫氏はこう主張する。

 現在,スーパーコンピュータの世界ランキング1位と2位をLinux搭載マシンが占めている。1位は米IBMと米エネルギー省(DOE)が開発しLAWRENCE LIVERMORE研究所に納入した「BlueGene/L」で70.72テラFLOPS。2位は米Silicon Graphics(SGI)と米航空宇宙局(NASA)の「Columbia」で51.87テラFLOPS。2004年11月に発表されたランキングで,5回連続(2年半)1位だったNECの「Earth Simulator(地球シミュレータ)」(35.86テラFLOPS)を抜き去った。

Linuxスパコン BlueGene/L
ラックが斜めになっている理由は,空冷の効率を向上させるためという
 そのBlueGene/Lの日本での第1号機をニイウスが導入,2月25日に報道関係者などに公開した。導入したBlueGeneは1ラックでLAWRENCE LIVERMORE研究所の16分の1の規模だが,1024ノード,4.61テラFLOPSの計算能力を持つ。

 スーパーコンピュータは科学技術計算や製造業の設計業務が主要市場とされてきたが,末貞氏は「金融,保険,証券などの市場でも潜在的な計算需要がある」という。日本総合研究所 研究事業本部 上田浩三氏は説明会で「2005年から2007年の日本での高速演算需要は約3000億円。うち金融,保険,証券業が約1600億円で,資産運用,市場リスク計算,信用リスク計算,デリバティブ評価,価格付けモデル,キャッシュフロー設計などの応用がある」との予測を述べた。

 そして「自前で所有するほどの需要がない中小規模の金融機関は,必要な時にオンデマンドでこういった計算パワーを利用することになる」(末貞氏)という。

 Linuxスーパー・コンピュータの台頭の背景には,量産プロセサの性能が向上,これらを並べ,クラスタリングするアーキテクチャが有利なり,またクラスタリングのためのソフトウエアがLinux上で数多く公開されていることなどがある。オープンソースのため改良も容易だ。BlueGeneのフロント・ノードとI/OノードはLinux。計算ノードには,プロセスの生成機能fork()などを除き軽量化した独自OSカーネルが搭載されている。

 日本SGIも2005年3月,Itanium 2プロセッサ1280CPUを搭載したLinuxスーパー・コンピュータ「SGI Altix 3700 Bx2」を東京大学物性研究所に納入する。また日本原子力研究所にはItanium 2プロセッサ2048CPUを搭載した「SGI Altix 3000」を富士通と共同で納入,2005年3月末に本稼動を予定している。

(高橋 信頼=IT Pro)

【訂正】
掲載当初「計算ノードには,プロセスの生成機能fork()などを除き軽量化したLinuxが搭載されている」と記述しておりましたが,正しくは「プロセスの生成機能fork()などを除き軽量化した独自OSカーネルが搭載されている」です。お詫びして訂正いたします。