米IBMは1月11日(現地時間),同社が保有する500件の特許をオープンソース・ソフトウエアに対し許諾すると発表した。この許諾は「Open Source Initiative(OSI)によるオープンソースの定義を満たすソフトウエアのために働くあらゆる個人,コミュニティおよび企業に適用される」(IBM)という。今回許諾した特許には,OSが使用するダイナミック・リンク手法,ファイル・エクスポート・プロトコルに関するものなど。IBMのホームページ上にその詳細が公開されている。

 オープンソース・ソフトウエアについてはこれまで,特許が普及のための障害になる可能性が指摘されてきた(関連記事)。ドイツのミュンヘン市は特許への懸念から,Linuxデスクトップの導入計画を一時中断した(関連記事)。実際に特許はLinuxの開発に影響を与えている。Linuxカーネルの中核開発者David S.Miller氏は特許の使用許諾が得られなかったため,あるアルゴリズムを使用できなかったと語っている(関連記事)。

 IBMは2004年8月に,Linuxカーネルに対して同社が保有する特許を行使しないことを宣言していた。今回の発表はさらに「何千ものオープンソース・プロジェクトおよびオープンソース・ソフトウエアをカバーする。今回の特許許諾はこれまでのうち最大のものと確信している」(IBM)。IBMは2004年に3248件の米国特許を取得。12年間連続で米国で最も多くの特許を取得したという。

 「従来のインダストリアル・エコノミーと異なり,イノベーティブ・エコノミーにおいては,知的財産権を単に所有者に自由と収入をもたらす以上のものとして適用することが要求される。世界中の開発者の協業に基づく革新,相互運用,オープン・スタンダード,オープンソース・ソフトウエアを促進することは,市場を明確に活性化する。IBMがオープンソース開発者に開放する特許は,継続的な革新を促進するために役立つと確信している。」(IBM senior vice president, Technology and Intellectual Property John E. Kelly氏)。

 またIBMは「これは一回限りのイベントではない」(Kelly氏)と,オープンソースに対する特許の開放を継続する姿勢を示している。

(高橋 信頼=IT Pro)