日本知財学会副会長 今野浩氏
 中央大学 理工学部経営システム工学科教授で日本知財学会副会長の今野浩氏が12月1日,講演で「ソフトウエア特許への投資を回収しようとする動きが,事件として数年以内に起きる」と語り,ソフトウエア特許による大型の訴訟が発生し,IT業界に大きな影響を与えるとの見方を示した。

 今野氏は,イベント「Open Source Way 2004」で「ソフトウエア特許――何でも特許,どこでも特許の時代」と題して講演した。今野氏は数理計画法や金融工学を専門とすると同時に,ソフトウエア特許「カーマーカー特許」は無効とする訴訟の原告となり,15年にわたって戦ったという経歴も持つ。

 今野氏は「米国の知的財産保護強化戦略により,数学もDNA情報もビジネス・モデルも特許になる『何でも特許』時代が到来している。年間3万件もの特許が登録され,つまらない小さな特許が,藪を作り,研究開発を阻害しはじめている。本来ならソフト開発に費やされるべき1兆円が特許取得に費やされている」と語る。

 さらに「2002年の米デューク大学事件マデー判決では,大学の中での研究やも,原則として特許に縛られるという判決が示され,検証も自由に行うことができなくなった。特許庁が2004年9月に明らかにした見解でも,原則としてマデー判決を支持した。何でもに加え『どこでも特許』時代となった」(関連記事,今野浩の「ソフトウェア特許論」)。

 「日本知財学会の出席者は3分の2は技術者だが,ほとんどはバイオ関連技術者だ。遺伝子特許で自由に研究ができず,苦労しているためだろう」(今野氏)。今野氏は,今後ソフトウエア技術者にも同様な状況が訪れると予測する。「ソフトウエア特許にこれだけ投資が行われている以上,回収しようとする動きは,事件として数年以内に起こるだろう」(今野氏)。

 「どろどろの戦いになるだろう。その長い闘争を経て,ソフトウエア特許の弊害が認識され,廃止されることになるのではないか」(今野氏)。

(高橋 信頼=IT Pro)