「今までは主にドイツ国内市場を相手にしてきたが,今後は新ブランド『AVIRA』で国際展開する」――。フリーのウイルス対策ソフト「AntiVir Personal Edition」などで知られる独H+BEDVのCEO(Chief Executive Officer)Tjark Auerbach氏は11月24日,IT Proの取材に対して,同社の戦略などを語った(写真左)。

 H+BEDVは,ドイツではトップ・シェアを誇るアンチウイルス・ベンダー。中小規模のエンタープライズおよび個人ユーザー向けの製品では60~70%のシェアを占めているという。

 同社は,今まではドイツ国内での販売を主としていたが,2003年にDragos Stanescu氏(写真右)が同社に入社したことで“世界進出”の足がかりができたという。というのも,Stanescu氏は「RAV AntiVirus」ブランドで知られるルーマニアGeCAD SoftwareのInternational Sales Managerだったので,世界40カ国70社の販売パートナーとの“コネ”があったためだ。GeCADは2003年に米Microsoftに買収された(関連記事)。それを機に,Stanescu氏はH+BEDVに移籍した。つまり,“RAV時代”の販売網を使って,国際展開を図る。

 ドイツ以外では,新たに作った子会社「AVIRA」ブランドで同社製品を販売する。「H+BEDV」や「AntiVir」の名前は出さない。その理由として,Auerbach氏は「“antivir.com”というドメイン名を他社に取られている」ことと,「“H+BEDV”や“AntiVir”は他の国の人には発音しにくいし,覚えにくい」ことを挙げる。例えば,H+BEDVは「ハーウントベドゥフ」と発音する。前出のStanescu氏は,現在AVIRAのInternational Sales Managerを務める。既に,9月15日にLinux版を,10月15日にはWindows版のアンチウイルス・ソフトを,AVIRAブランドで発売した。

 ただし日本国内では,H+BEDVと技術提携しているプロマークが,H+BEDVのスキャン・エンジンを使ったウイルス対策ソフト「ProScan」シリーズを2003年から開発/販売している。「国内では,“AVIRA”ブランドではなく,プロマークが手を加えた形で“ProScan”ブランドとして販売することになるだろう」(プロマークの勝田恵三代表取締役)。プロマークでは,H+BEDVのスキャン・エンジンを使ったセキュリティ・アプライアンス「ProGuard」も11月16日に発表している。

 実は,プロマークもGeCAD買収の影響を受けた企業の一つ。というのも,2003年まではRAV AntiVirusをローカライズして国内で販売していたからだ。「3年間販売してきて,多くの企業や研究機関などに導入された。買収が決まったとき,多くの顧客に詰め寄られて困った」と,勝田氏は当時を振り返る。

 なお,「AntiVir Personal Edition」の無償提供は今後も続ける予定であるという。「『AVIRA』ブランドで無償版を提供するかどうかは,各国の販売パートナーに判断を任せる」(Auerbach氏)。同氏によると,無償版によるプロモーション効果は“絶大”だという。

(勝村 幸博=IT Pro)