約200人が集まったSeasarコミュニティのイベント
比嘉康雄氏
栗原傑享氏
羽生章洋氏
 国産オープンソース軽量Javaアプリケーション・サーバー「Seasar」のコミュニティがNPO法人を設立する。2004年12月中に内閣府に申請し,2005年4月の設立を目指す。意思決定や財務面での透明性と,開発や保守の永続性を改善することでSeasarの普及拡大を図る。

 Seasarは,アスペクト志向やDI(Dependency Injection)などの新しい技術を取り入れたJava APサーバー(正確にはDIコンテナ)。比嘉康雄氏が中心となって開発しており,すでに数十近い実際の業務システムに適用されている。統合開発環境Eclipse用のプラグイン「kijimuna」や,Strutsとの連携モジュール「S2Struts」,DBアクセス自動化のための「S2Hibernate」などSeasar用のモジュールを開発するボランティア開発者も多数いる。また比嘉氏は,Seasarに基づく設計開発手法「くーす」も提唱している。

 NPO法人設立の発表は,11月20日に開催されたSeasarコミュニティのイベント「Seasarのからさわぎ2004 Final」で行われた。NPO法人設立について説明したkijimuna開発者でグルージェント代表取締役社長の栗原傑享氏は「これまでボランティアによる個人的な人脈でコミュニティを運営してきたが,The Apache Foundationのように法人化することでSeasarを安心して利用してもらえるようにしたい」と,目的を語った。

 「監督官庁の指導や会計監査が存在するNPO法人とすることで透明性を向上させる。財務面で基盤を作ると同時に,仮に中核開発者に不測の事態が発生した場合でも,開発者や保守が長期的に継続できるようにする」(栗原氏)。

 Seasarは,比嘉氏が「目的は新しい技術を追うことではなく,実案件の課題解決」(関連記事)と語るように,実務への応用を当初から目的として開発された。NPO法人の設立により,より信頼性や長期運用が要求される用途にも,Seasarを採用できるような環境を整備する。

 NPO法人の名称は「Seasarプロジェクト」を予定している。収入は個人会員や法人会員の会費を想定しているほか,公的な開発助成の申請なども検討している。ソフトウエアやドキュメントの利用,開発への参加は会員でなくとも従来どおり無料で行える。詳細は,今後コミュニティで議論しながら詰めていく。

 このほかイベントでは,比嘉氏が開発中の新機能について説明した。Sunが提唱しているプレゼンテーション層の技術Java Server Faces(JSF)を利用するための機能「S2JSF」のデモを行った。また次期版Seasar3ではEJBを新たにサポートする方針が発表された。EJB 3.0準拠のEntity Beanを,DBアクセス自動化ツールS2DAOの次期版S3DAOによりサポートし,DBアクセス機能を統合する。

 またスターロジック 代表取締役 羽生章洋氏は,同社がSesasarを使い構築中の大規模プロジェクトについて報告した。同社は原則としてSesasarを使用しており,2004年は4件のSeasar採用案件を手がけた。基幹系システム・リプレース向けのフレームワーク,Flashによるe-ラーニング・システム,Flashを使用した社内購買システムなどだ。現在手がけているのは,約2000画面の大規模な汎用機からのレガシー・マイグレーション・システムという。