米国マサチューセッツ州 CIO Peter Quinn氏
フィリピンIntegrated Microelectronics CTO Jay Sabiod氏
米IBM 公共セクタ オープンソース&リナックス ディレクタ Mary Ann Fisher氏
北海道 企画振興部IT推進室主幹 小林誠氏
静岡県 企画部高度情報総室長 村松茂氏
岐阜県 知事公室参事 CIO補佐官 知地孚昌氏
長崎県 総務部参事監 情報政策担当 島村秀世氏
 「我々はオープンソース・ソフトウエアを活用し,自治体間でのアプリケーションも始めている」——米国マサチューセッツ州 CIO Peter Quinn氏は11月18日,岐阜県で開催された会議「オープンソースとe-ガバメント」でこう語った。同会議はベンチャー企業やIT人材育成などを行っている岐阜県の財団法人ソフトピアジャパンが主催したもの。マサチューセッツ州のほか,フィリピン,北海道,静岡県,岐阜県,長崎県のIT担当者などが,政府や自治体でのオープンソース・ソフトウエア活用について報告した。

 マサチューセッツ州は2003年9月,オープンソース・ソフトウエアの活用,オープン・スタンダードへの準拠を州のIT方針として打ち出した。同州では現在IAサーバー上のRed Hat Adavanced Server 2.1やメインフレーム上のSUSE Linux Enterprise Serverなどを利用。調達システムなどを構築し,コスト削減効果を上げているという。

 また,アプリケーションを他の自治体と共有し再利用する試みも始めている。マサチューセッツ州が発起人となり「Government Open Code Collaborative」を設立,ロードアイランド州,ペンシルバニア州,ユタ州,カンザス州,ミズーリ州,ウエストバージニア州などがメンバーとなっている。

 フィリピンIntegrated Microelectronics CTOで元フィリピン国立先端科学技術研究所 理事のJay Sabido氏は,オープンソースを活用した電子自治体プロジェクト「eLGU(Local Goverment Unit)」について報告した。フィリピンではオープンソース・ソフトウエアを利用したコンテンツ管理システムを政府が開発して自治体に無料で配布,すでに多くの自治体が採用している。またオープンソースを利用した固定資産税システムも開発した。375自治体がパイロット・プロジェクトに参加しているという。

 米IBM 公共セクタ オープンソース&リナックス ワールドワイド・プログラム・ディレクタ Mary Ann Fisher氏は,世界各国のオープンソース採用状況を紹介した。Fisher氏は「昨年,世界各国の政府は合わせてオープンソース・ソフトウエアを採用したシステムを20億ドル購入した」と述べ,イタリアの自治体Regione Lazioや米ニューヨーク州のポータル・サイトがzSeries上のLinuxを採用した例を紹介した。

 北海道 企画振興部IT推進室主幹 小林誠氏は北海道でのオープンソース・ソフトウエア活用について報告。教育情報ネットワーク「ほっかいどうスクールネット」,ポータル・サイト「北海道人」,総合文書管理システム,電子申請システム「申請堂」では「できる限りオープンソース・ソフトウエアを活用した」(小林氏)という。また共同アウトソーシングのプラットフォーム「HARP」でも「積極的にオープンソース・ソフトウエアを採用していく」と語った。

 静岡県 企画部高度情報総室長 村松茂氏は自治体の共同アウトソーシングについて公演した。総務省が推進している共同アウトソーシングの枠組みの中で,静岡県,福岡県,山形県,徳島県は財務会計パッケージを共同開発している。「単年度で時間,予算の制約がある」(村松氏)ことから,日立製作所のパッケージをベースに開発を行っている。4件以外の自治体にもソースコードをすべて公開,無償で利用できるようにする。また日立のパッケージはWindows 2000上でAPサーバーcosminexas,HiRDBを採用しているが,Apache,tomcat,Oracleでも動作可能とする方針である。

 岐阜県 知事公室参事(情報化推進担当)CIO補佐官 知地孚昌氏は2004年9月にリニューアルした「ぎふポータル」を紹介。リニューアルにあたってコンテンツを自治体の組織単位から利用者本位に再構成した。WebサーバーはSunのUNIXサーバーだが,コンテンツ管理サーバーおよびメール・サーバーにLinuxを利用しているという。

 長崎県 総務部参事監 情報政策担当 島村秀世氏は「脱おんぶにだっこ」と題して講演した。長崎県では情報システム調達の改革を実施,オープンソース・ソフトウエアを使い,県の職員が仕様を作成することで,全国展開している大手IT企業ではなく,地元のIT企業が受注できるようになった(関連記事,島村秀世氏インタビュー)。

 三菱総合研究所 情報技術研究部主席研究員 比屋根一雄氏は,各国政府・自治体のオープンソース・ソフトウエア採用動向と,オープンソース・ソフトウエアのメリット/デメリットについて講演した(参考,比屋根氏が主宰するホームページ「オープンソースと政府」)。

 OSDLジャパン ディレクタ 菊地健太郎氏は,OSDLが自治体を対象にオープンソースの適用に関して実施した調査の結果を紹介,「Linuxは自治体に必要な機能を備えている」と語った。

(高橋 信頼=IT Pro)