電通国際情報サービスは2004年中に,オープンソースJava APサーバー「Seasar2」の有償サポートを始める。Seasar2は同社の社員である比嘉康雄氏(写真)が個人で開発していたが,すでに数十のシステムで採用されるなど普及が進んでおり,企業としてのサポートに踏み切る。サポートには比嘉氏自らが中心となってあたる。

比嘉康雄氏
 Seasar2は,IoC(Inversion of Control)やアスペクト指向プログラミング(AOP)といった,Javaやソフトウエア工学の分野で注目されている新しい概念に基づき設計されている。IoCやAOPを取り入れたJava APサーバーはSpringなど海外にもあるが「誰にでも使いこなせる庶民のための道具」(比嘉氏)を目指し,使いやすさ,理解しやすさを追及したことなどが特徴だ(関連記事「目的は新しい技術を追うことではなく,実案件の課題解決」

 小規模なシステムも含めれば,すでに数十のシステムで採用されたと見られる。電通国際情報サービスでも,Seasar2を採用した2件のシステムを開発中だ。いずれもリッチ・クライアントによる会計システムで,FlashとFlexを使用している。Seasar2では,FlashとFlexを利用しやすくするための機能も備えている。

 Seasar2これまでに3万回以上以上ダウンロードされた。統合開発環境Eclipseのプラグインやデータベース・アクセス・ツールなど,関連モジュールを開発する技術者も出てきている。11月には,Seasar2のユーザーによるイベントが開催されるが,200人の申し込みがあり,会場の収容力の問題から受付を締め切った。

 イベントで人気が高いのは開発手法に関するセッションという。Seasar2にマッチした開発手法として,比嘉氏は「kusu」と呼ぶ方法論を提唱している。「どう作るかではなく,何を作るか,そのためにユーザーの要件をいかに引き出すかを重視する」(比嘉氏)。そのため,業務フローを確定することに力を入れる開発手法という。

 有償サポート・サービスは,営業時間内のメールによる相談や必要に応じSeasar2のバグ修正を行い,1プロジェクト・1年間で50万円程度を予定している。「サポートがないため,Seasar2を使いたくても認めてもらえない,といった状況を解消したい」(比嘉氏)。すでに引き合いも来ているという。

(高橋 信頼=IT Pro)