「プロジェクトマネジメント(PM)は退屈な話題」と語るのは,元米国国防総省長官事務局上級契約パフォーマンス分析官のウェイン・アバ氏である。アバ氏は国防総省に勤務時代,戦闘機や船舶などを調達するプロジェクトのパフォーマンスをマネジメントする要職に就いていた。

 開発を請け負った航空機メーカーや船舶メーカーが計画通りプロジェクトを進めているかどうかを確認し,納期遅れやコスト増の兆候が出たときにはいち早く警告の報告書を国防総省中枢に上げる仕事である。このためにアバ氏はプロジェクトのパフォーマンスを把握する手法「アーンドバリュー・マネジメント(EVM)」を利用するとともに,この手法を発展させてきた。

 国防総省を退官後,PM推進組織の責任者やコンサルティング会社副社長などを務め,EVMを普及させる活動に取り組んでいる。アバ氏は知日家であり定期的に来日している。冒頭の発言は前回会ったときに聞いたものである。

 実はこの発言の真意は,メディアに対する批判と提言であった。次のような文脈でアバ氏は語った。

 「メディアがPMに関心を持つのは通常,悪いニュースがあったときだけ。政府の国家プロジェクトで実験が失敗に終わった時,テレビのニュースは繰り返し報道する。これに比べるとPMそのものは退屈な話題だ。政府が何かのプロジェクトで成功を収めるケースは一般に信じられているよりはるかに多いのだが,それが報道されることはめったにない。プロジェクトに関して進捗状況を定期的に報告し,公開の場で討論できるような場を設けることが望ましい」

 なおアバ氏は9月上旬に来日する。同氏が長らく理事長を務めていた専門家団体「カレッジ・オブ・パフォーマンス・マネジメント(CPM)」の活動のためである。CPMはEVMの教育と研修を行う組織であり,EVM規格のとりまとめも行っている。年に二回の会議を開いて,教育サービスを提供することになっており,2003年には日本で開催した。米国以外でCPMが開かれたのは初めてであった。

 CPMの第2回目が9月8日と9日に開かれる。関心のある方はこちらをご覧いただきたい。

(谷島 宣之=日経ビズテック編集委員)