NTT東日本は“ブロードバンド時代の黒電話”として開発を進めているIPテレビ電話端末を,日本コンベンションセンター(幕張メッセ)で開催中のネットワーク関連の総合展示会「NetWorld+Interop 2004 Tokyo」(N+I)」で披露した(写真)。この端末を使ったサービスを今年夏にも開始する。通話料金はIPv6を用いた場合は月額数百円の定額制とする見込み。同社が提供するFTTHサービス「Bフレッツ」のキラー・サービスとすることをもくろむ。

 NTT東日本(およびNTT西日本)がIPテレビ電話サービスを提供することは今年4月6日に発表している(関連記事)。その発表時点では6月にサービス開始予定だったが,遅れている。その理由は「グラフィカル・ユーザー・インタフェース(GUI)を一から作り直している」(NTT東日本)ため。この端末には0~1の番号ボタンはなく,タッチスクリーンで操作する。機能としてはほぼできあがっているが,当初のGUIは不評だったという。

 IPテレビ電話端末はBフレッツの利用を促進することを目的として開発が進められている。フレッツ・ADSLでも利用はできるが推奨はしない。上り方向の帯域が確保されない可能性があるからだ。現在の仕様では,帯域は2Mビット/秒を使用する。

 この端末を用いたサービスは2種類の方法で提供する。1つは,通常のIP電話と同じ050番号を用いて,インターネット接続事業者(ISP)から提供する。通話料金は各ISPが発表するとしているが,まだどのISPからも発表はない。

 もう1つはNTT東日本が提供している統合コミュニケーション・サービス「FLET'S.Net(フレッツ・ドットネット)」を用いるもの。FLET'S.Netはフレッツ・ユーザー向けにIPv6を用いて,テレビ電話やチャット,ファイル共有などピア・ツー・ピアのサービスを提供している。現在はパソコン・ベースで利用するが,今回,公開したIPテレビ電話端末もIPv6対応で,FLET'S.Netに接続できる。FLET'S.Netに接続したIPテレビ電話端末間では月額数百円の定額で通話できるようにする予定。

 050番号ではISPの網を通るが,FLET'S.Netではその網内だけで通信できるため遅延や揺らぎが少なく,よりきれいな映像と音でテレビ電話を利用できるとしている。

 FLET'S.Netの利用はデメリットもある。 NTT西日本でも同様の計画があるが,FLET'S.Netに相当する「フレッツ・コミュニケーション」とFLET'S.Netは相互接続していないため,東日本での利用に限られるのだ。西日本と通話するためには,050番号を用いたISPによるサービスを利用する必要がある。

 このIPテレビ電話端末自体は売り切りで販売する。レンタルでも提供するかは検討中。テレビ電話自体は決して新しいものではない。果たしてNTT東日本のもくろみ通り,IPテレビ電話がどの家庭でも使われる標準的な“ブロードバンド時代の黒電話”になるのか。少なくとも,GUIの全面見直しをかけたのは,それに向けての重要な1ステップであることは間違いないだろう。

(和田 英一=IT Pro)