SOA戦略「Project Kitty Hawk」の発表

 今回のJavaOne04の要注目キーワードの一つが「SOA(サービス指向アーキテクチャ)」である。会期中に,Sun MicrosystemsとOracleがSOAへの取り組みを表明。従来からIBM,BEA SystemsらがSOA対応を強調しており,主要J2EEベンダーが揃ってSOAに取り組むという構図がいっそう鮮明になった。

OracleがネイティブBPELエンジンを出荷開始,JDeveloper10gをBPEL設計ツールに

 Oracleは,JavaOne2日目のジェネラル・セッションで開発担当上席副社長Thomas Kurian氏がSOA戦略を発表した。

 今回Oralceが発表した製品はBPEL(Business Process Execution Language)で記述した業務フローを動かすミドルウエア(ネイティブBPELエンジン)「Oracle BPEL Process Manager」である(関連記事)。すでに製品出荷の段階であり,しかも無料の試用版をダウンロードできる(ダウンロード・ページへ)。すでにIBMが発表済みのネイティブBPELエンジン(WebSphere Business Integration Server Foundation)へ対抗する意味合いもありそうだ。

 Webサービスを組み合わせて業務フローを設計する開発環境として,発表済みのツールJDeveloper10g(関連記事)を利用する。BPELエンジンと開発ツールをいち早く提供することで,SOAへ移行するユーザーを引きつける狙いだ。

SunのSOA製品群Project Kitty Hawk,新ツールCreatorもSOA対応へ

 Sun Microsystemsが発表したのはSOA戦略は「Project Kitty Hawk」である。1日目のJonathan Schwartz社長兼COOのジェネラル・セッション中,Sun Software部門のJohn Loiacono執行副社長が発表した(写真)。Project Kitty Hawkとはミドルウエア,開発ツール,プロフェッショナル・サービスの総称で,今後18カ月をかけて完成させていく。最初の製品は2005年前半に登場する予定。WS-Iの各種Webサービス仕様や,JSR-208(JBI: Java Business Integration)などの標準に基づく。この日出荷開始したJSF対応の新開発ツールSun Java Studio Creator(関連記事)も,SOA対応ツールとして機能を拡張していく。

BEAは,オープンソースのSOAランタイムBeehiveと,サービス・バスQuickSilverをデモ

 BEA Systemsは,ジェネラル・セッションで,同社の開発ツールWorkshopと,その上のプログラミング・モデルをオープンソースにしたBeehiveを組み合わせたデモを見せた。Workshopは簡易型のプログラミング・モデルを備えているが,それをWebLogic以外のプラットフォームにも対応させ,SOAの基盤技術としていくとのアイデアである。

 新しい話題として,「先週,EclipseとBeehiveを結びつけるオープンソース・プ ロジェクト「Pollinate」が立ち上がった」(CTOの Scott Dietzen氏)ことを報 告した。BeehiveをサポートするEclipseプラグインとUIコンポーネントのセットである。さらに,Workshop/Beehiveの上で扱えるソフトウエア部品「コントロール」が,すでに70種以上あることをアピールした。これらはSOAによるシステム構築の素材として利用できる。

 デモの内容は,この6月に日本で開催したeWorld Japanで見せたものと同じ。Workshopで開発したアプリケーションが,同社のJ2EEアプリケーション・サーバーWebLogicだけでなく,BeehiveとTomcatの組み合わせでも稼働する様子を見せた。ESB(エンタープライズ・サービス・バス)であるQuickSilver(コード名)のデモも見せた。同期型,非同期型の両方の通信手段を提供する。「複数の企業間にまたがって使うには2フェーズ・コミットを前提にした同期型モデルは無理。非同期型メッセージングが必要だ」(同)。

IBMと合わせ大手J2EEベンダーのSOA戦略が出揃う

 比較のため,すでに発表済みのIBMのSOA戦略をもう一度見てみよう。業務フローを設計できる開発ツール「Modeler」,ネイティブBPELエンジンを搭載した「WebSphere Business Integration Server Foundation(WBI SF)」,大量のメッセージ交換をこなすESB(エンタープライズ・サービス・バス),既存システムをサービスとして仮想化するためのアダプタ,構築支援サービスを用意する(関連記事)。

 今回のBEA,Sun,Oracleの各社とも,大筋ではIBMと似た要素技術を揃えようとしている。すなわち,業務フロー設計ツール,BPELエンジン,サービス・バス(ESB)である。

 日本国内の企業システム構築の現場ではWebサービスはまだ存在感が薄いようだが,米国ではSOA対応はもはや「既定路線」となりつつある。日本でも,やがてSOAブームがやってくる可能性がある。「SOAには現時点ではマーケティング用語の色合いが強く感じられる」(あるJavaOne参加者)との見方もあるが,「WS-IやBPELの登場でWebサービス技術がSOAを実現するための実力を付けてきた」(同)という技術的な背景があることは事実。一歩先を見る立場にあるシステム担当者は,今後のSOA動向に注意を払う必要がありそうだ。

(星 暁雄=日経BP Javaプロジェクト)