欧米の環境保護団体による「人体に有害な臭素化難燃剤をパソコンのほこりから検出した」(関連記事)という発表に対し,臭素系難燃剤メーカーが設立した団体「BSEF(Bromine Science & Environmental Forum)」は6月8日,IT Proに「環境保護団体が『特に多く検出された』という臭素系難燃剤『デカ-BDE』は安全性が確認されている」とのコメントを寄せた。またそのほかの,人体への影響が懸念されている臭素系難燃剤は,すでに日本ではほとんど輸入,生産されていないとしている。

 難燃剤として使用されるポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)には臭素を9~10含むデカ-BDE,臭素を6~9含むオクタ-BDE,臭素を4~6含むペンタ-BDEがある。BSEFによれば,「デカ-BDEに関しては10年間という長い期間をかけて,あらゆる方面からのリスクの可能性が検討されている。2004年5月26日に,EUリスク・アセスメントの最終審査(Competent Authorities Meeting,Dublin)で,禁止や削減などいかなる法的処置をとることなくデカ-BDEの製造および使用を認めた」(BSEF Japan プログラム・ディレクター 徳勢正昭氏)という(BSEFによるレポート)。「また,日本でも1978年に,デカBDEは『難分解性ではあるが,濃縮性はない又は低いと判断される物質』とされている」(同,独立行政法人 製品評価技術基盤機構 化学物質管理センターの資料)。

 ただし,臭素化難燃剤のうち,ポリ臭化ビフェニール類(PBB)やペンタ-BDEなどは,分解されにくく,生体内に蓄積され影響を及ぼす恐れがあり,EUでは2004年末までに市場から全廃される予定である。オクタ-BDEについては「オクタ-BDE自体は蓄積性は低いが,臭素を6~9含むオクタ-BDEの中には,臭素を4~6含むペンタ-BDEも混ざっている」(BSEF 徳瀬氏)ため,ペンタ-BDEともに全廃される予定となっている。

 環境保護団体の検査では,デカ-BDEとともにオクタ-BDEも検出されている。BSEFの徳瀬氏は「オクタ-BDEが発見された機種は,1995年以前の製品を含むと考えられる。デカ-BDEの製造メーカーはOECDとの間でVICという自発的なコミットを行い,デカ-BDEの純度を97%以上にすると約束した。現在はデカBDE以外のBDEが不純物として生成しないような生産の仕組みに変更されている」としている。

 日本でのPBBやPBDEの生産・輸入の状況について,PBBは当初より生産や輸入の実績はないという。ペンタ-BDEは1990年以降,生産や輸入の実績はなく,オクタ-BDEは1994年までは1000トン弱の輸入があったが,ここ数年は0に近い状態という。安全性が確認されたというデカ-BDEは,現在2000トン強が輸入または生産されている。「90年代半ばからの各種エコラベルの影響もあり,ピークだった90年の10000トンから縮小している」(BSEF 徳瀬氏)。

(高橋 信頼=IT Pro)

BSEF(Bromine Science & Environmental Forum,臭素科学環境フォーラム)のホームページ