野村総合研究所は,Webアプリケーション・フレームワークStrutsの機能を拡張するソフトウエアをオープンソース・ソフトウエアとして無償配布する。2003年末からT-Strutsという名称で仮公開を開始しており,早ければ2004年2月にも正式に公開する。

 Strutsは,オープンソースのJavaプログラムを開発している団体Jakatra Projectが配布しているWebアプリケーション・フレームワークである。シンプルで習得しやすいことなどから広く普及しているが,反面,特に業務アプリケーションへの適用に際しては機能が不足するケースもある。

 野村総合研究所はStrutsを大規模な業務システムに適用しており,その際に必要となり開発した機能を公開した。具体的には,(1)認証・承認補助機能,(2)ページ間でデータを引継ぐ機能,(3)2重送信防止機能,(4)ビジネス・ロジック呼び出し機能,(5)ジャーナル機能,(6)画面閉鎖機能などだ。

 (1)の認証・承認補助機能は,認証後にユーザー属性をDBMSなどから取得する機能。(2)はCookieなどが使えない場合などに,複数のページで共有したいデータをHTMLのhiddenフィールドとして埋め込んで引き継ぐ機能。(3)の2重送信防止機能は,ダブルクリックや戻るボタンによる画面の2重遷移などを防止する機能である。(4)のビジネス・ロジック呼び出し機能は,EJBの知識を習得しなくとも,EJBを呼び出すプログラムを記述できる機能。Struts標準のビジネス・ロジック記述クラスであるActionクラスと同じ方法で,EJBを呼び出せるようにする。(5)のジャーナル機能は,リクエストやそれに対する応答に要した時間などを記録し,集計する機能。(6)の画面閉鎖機能は,システムを停止させずにシステムを保守するため,指定されたプログラム(Actionクラス)へのリクエストを「現在サービスを停止中です」などメンテナンス中であることを示す画面へ転送する機能である。

 すでに同社が開発,運営する「アグリゲーション・システム」などでの稼働実績がある。株価やニュース・サイトからの情報を収集,集約し,メールやWebページでユーザーに提供するシステムで,1日に数十万通のメールを配信し,数十台のサーバーで構成されるシステムである。

 野村総合研究所は2003年12月にオープンソース・ソリューションセンターを設立,StrutsやTomcat,JBossといったオープンソース・ソフトウエアを利用したシステム構築事業を本格的に開始した。T-Struts(仮称)をオープンソース・ソフトウエアとして公開することで「オープンソース・ソフトウエア推進の一環として,Strust自体の普及を促進する」(野村総合研究所 情報技術本部 システム技術部 オープンソースソリューションセンター 上級テクニカルエンジニア 寺田雄一氏)ことを狙う。

 また,T-Struts(仮称)を今後も同社が手がけるシステム構築に利用していく方針だが「ソースコードが公開されていれば,仮に開発元のサポートが終了したとしてもメンテナンスでき,安心して利用できる。T-Strutsも,公開することで顧客が安心して採用できる」(野村総合研究所 情報技術本部 黒澤直樹氏)と見ている。

(高橋 信頼=IT Pro編集)