写真●AL-501の試作機 ブロードバンド・ルーターの配下でも電話が使えるように新プロトコル「STUN」を採用した。

 アリステルは,MSN Messengerと通話できるVoIPアダプタを「Networld+Interop 2003 Tokyo」で参考出品した。この新製品「AL-501」は今年夏に1万5000円前後で販売開始する予定(写真は試作機)。UPnPに対応していないブロードバンド・ルーターの配下でも,標準化されたばかりのプロトコル「STUN」を用いてNAT越えができる。

 AL-501は,通常の電話機をブロードバンド・ルーターなどに接続するための装置。通常の電話機をインターネット電話として用いることができる。同社はすでにVoIP機能を備えたISDNルーター「AL-201」を販売している。新製品AL-501は,AL-201からルーター機能を取り除いて,ブロードバンドでの利用に合わせていくつかの機能を加えた。

 まず,音声コーデックとして64kbpsのG.711も使えるようにした。これはISDNでは帯域が狭いので利用が難しかったものである。

 また,ブロードバンド・ルーターを経由して双方向通信するために,UPnP(ユニバーサル・プラグ&プレイ)機能とSTUNによるNAT対応機能を備えた。UPnPに対応したブロードバンド・ルーターを使っていれば,UPnP機能によって,双方向通信ができるようになる。しかし「UPnP機能を備えているブロードバンド・ルーターでも,バグが残っていて必ずしもちゃんとUPnPが機能するわけではない」(同社の姜貴栄社長)。また,UPnPに対応していないブロードバンド・ルーターも存在する。

 そこで同社はRFC3489のSTUN(Simple Traversal of UDP Through NATs)に基づいたプロトコルを開発して,UPnPに対応していないブロードバンド・ルーターであっても双方向通信できるようにした。「この方式でほとんどのルーターを通過できる」と姜社長は自信を見せる。

 AL-501のもう1つのユニークな新機能として,AL-501に接続した電話機からMSN Messengerと通話できる。さらにはMSN Messengerのふりをして,AL-501に接続した電話機同士でも通話ができる。インターネット接続事業者が提供するIP電話サービスを用いるわけではないので,無料で利用できる。同社ではこれを「Messengerフォン機能」と呼んでいる。

 Messengerフォン機能を使うためには,AL-501と同じLANに接続したパソコンから,AL-501にMSN MessengerのIDとパスワードを登録しておく。AL-501がインターネットに接続していれば,そのIDのユーザーがMSN Messengerに接続していることになり,パソコンの代わりにAL-501から通話ができるようになるのだ。同社はこれを実現するために,MSN Messengerを利用する際に流れるパケットを解析して,MSN Messengerの通信手順を独自に解析。AL-501に組み込んだ。

(和田 英一=IT Pro)