Java開発者会議JavaOne2003では,Java技術に加わった新機能に関して多くの発表があった。今回米Sun Microsystemsが打ち出したメッセージは「Java開発者を1000万人に」(関連記事)だが,この目標に向けた取り組みは,経営的/マーケティング的なもの(PCへの最新JVM標準搭載や,広告キャンペーンの展開など)と,技術的なものから成る。技術的な取り組みとしては「今後のJava技術では,強力であることよりも簡単さを追求する」ということになる。

 従来のJava言語は,急激に適用範囲を広げ,リアルタイム処理やトランザクション処理,分散処理など複雑な処理に対応するべく機能拡張を続けてきた。今後の課題は,その複雑さを隠して,入門者にとっての敷居を低くすることだ。

言語仕様で「Java登場いらいの大変化」が起きる

 Java技術の次のメジャー・リリースとなるJ2SE1.5(Tigerリリース)では,言語仕様に関して「1995年のJava登場いらいの大きな変化」(Sun副社長兼フェローのGraham Hamilton氏)が起きる。新たに追加する新仕様を使うと,プログラム・コードの書き方がシンプルになるからだ。

 一つはメタデータ。プログラム・コード中に,「属性」を埋め込むことができる。もう一つのGenericsは,C++のテンプレートに相当するもので,汎用的な型を指定することができる。これらの機能を駆使するとコーディングが簡素になることも,スライドを見せながら説明した。こうした技術的な説明に対して聴衆が拍手で応じていたのは,実に開発者会議らしい光景だった。

これから登場するAPI群は「簡単さ」を重視

 Sun社のSoftware Group CTO(Chief Technology Officer)であるJohn Fowler氏は,JavaOne 1日目に「要注目JSR(JCPが策定するJava仕様)」として以下のものを挙げた。

・JSR-127 Java Server Faces
・JSR-175 Java Language Metadata
・JSR-220 EJB3.0
・JSR-223 Scripting Language support
・JSR-224 JAX-RPC2.0
・JSR-185 Java Technology for the Wireless Industry(JTWI)

 このリストのうち,Java Server Facesは,Webアプリケーションの開発を簡単にする。EJB3.0では,従来のEJB2.0に比べDD(Deployment Discriptor)の扱いを変更し,開発とデプロイ(実行)がより簡単になる。また,スクリプト言語サポートでは,PHPベースのスクリプト・ベースの開発とJavaプログラムの連携を標準化することで,Javaの活用範囲を広げる。

 そして,Sun社がこの秋にもベータ版をリリースする開発ツールProject RAVEは,Java言語のスキルがほとんどなくてもJavaベースのWebアプリケーション開発を可能とする(関連記事)。これは,Java Server Facesやメタデータなど,新たに登場した機能群を駆使することで可能となる。

 このように,新たなJava技術は,言語仕様,API,ツールと各層で「簡単さ」を目指す方向に向かっている。高度なスキルを持ったプログラマから,Javaの知識をほとんど持たない開発者まで,それぞれのレベルに応じた「簡単さ」を提供しようとしているといえる。

処理性能も地道に向上

 Java実行環境の地道な改善も進んでいる。Fowler氏は,次の項目を説明した。

・J2SE1.4.2ではJava Web StartによるSwingアプリケーションの起動時間を30%短縮
・SwingのGUI性能を50%向上
・Swingの対応GUIとして新たにWindows XPやLinux GTK+に対応。各種OSに対応したルック&フィールを実現できる。

 以上のように,最新のJava環境ではデスクトップ・アプリケーション開発のための能力が向上していることを強調した。Sun社は,従来「死角」となっていたデスクトップ市場にもJavaを売り込んでいく考えだ。

(星 暁雄=日経BP Javaプロジェクト)