写真1●「岡山に興味がおありのITベンチャには,東京であろうとすぐに説明に伺います」 取材中にこのセリフを2度も口にした,お役人にしては営業精神にあふれる岡山県企画振興部IT戦略推進室 情報政策課の高井崇志課長


 「今年度,4億円をかけて岡山情報ハイウェイの基幹部分のIPv6化する」と意気込むのは岡山県の高井崇志・情報政策課長(写真)。「国内最先端の通信インフラを整備するとともに,すでにあるベンチャ助成策を活用してもらって,IPv6ベンチャを誘致する」(同課長)。

 予算総額は3億9360万円。その半額の1億9680万円は政府からの補助金である。予算は3億円をネットワーク機器の購入に充て,残りはデータ・センターの整備に用いる。国内最大規模のIPv6事業といえる。現在,実施設計中で7月までに発注する。高井課長は「2003年中に稼働させる」と言い切り,部下を鼓舞する。

 岡山情報ハイウェイは,岡山県の全市町村をカバーする情報基盤である。県内14カ所に設けた拠点を8の字型に光ファイバで接続して,基幹網としている。この拠点に,市役所や町村役場,その他の公共施設,CATVインターネット接続事業者,民間企業などが接続して,ネットワークを利用できるようにしているのだ。

 今回の事業では,この岡山情報ハイウェイの14カ所の拠点のネットワーク機器を入れ替え,IPv6化と高速化を実現する。現在は8の字の円周部分は155Mbps,円が2つくっついた中央部分は622Mbpsだが,これをそれぞれ1Gbps,10Gbpsに増速する。拠点から先のIPv6化は各利用者に任されている。

 岡山県は,こうしたネットワーク面だけの整備だけでなく,補助・融資制度でもソフト系IP産業を助成しようとしている。まず,「eトップ・エリア」と呼ぶ地域を「おかやまIT特別経済区」とし,通信関係の補助金を出しているが,2003年4月1日から制度を拡充した。

 補助対象となるのは,ソフト系IT産業で新規に事業を興すか,他の地域から移転する法人である。今回の制度拡充で個人も補助対象になった。対象となる経費は,インターネット接続サービスを使うにあたっての契約料,工事費,利用料,通信回線料,ドメイン,IPアドレスに関する費用だった。これに加えて,サーバーなど通信機器の設置,保守費用も補助金の対象となった。補助金は1年目は全額,2年目,3年目は半額を補助する(サーバーなどの通信機器の設置費用は半額)。また対象となる地域は360ヘクタールの岡山市中心地区と岡山リサーチパークを拡大して,3600ヘクタールが対象になった。

 もっとも,こうした支援策を用意していても,岡山から東京に行くベンチャもある。県内にある倉敷芸術科学大学の大学発ベンチャ第1号として2003年1月に設立されたファットウェアは本社を東京に構えたのである(関連記事)。この点を高井課長に尋ねると「もちろん東京に出て行くところもあるでしょう」と苦笑する。「でも,それ以上に岡山に集まって欲しい」。果たして岡山県が描くビジョンは成功するのか。今後のIPv6産業の成長とも関連してこよう。

(和田 英一=IT Pro)