写真1●「SIPに経営資源を集中させる」 ソフトフロントの村田利文社長

 「最近,多く使われるようになってきたSIPによって,日本のオフィスにも個人直通電話とボイス・メールの文化が根付くはずだ」と期待を寄せるのは,SIPに事業を特化させているソフトフロントの村田利文社長。SIP(Session Initiation Protocol)とはIP電話などで使われている通信手順の名前である。

 村田社長によると,米国などのオフィスでは個人ごとに直通電話の番号(ダイレクト・イン)が割り当てられて,各個人に直接,電話がかかってくる。不在時には,ボイス・メールが応答し,外部からでもメッセージを確認できる。こうしたオフィスでのコミュニケーション・スタイルは国内では外資系企業などでは使われているが,それ以外では代表番号による対応が主流だという。

 電話やボイス・メールだけでなく,電子メールやファクシミリを統合的に扱えるようにするという「ユニファイド(統合)メッセージング」のコンセプトは数年前から提唱されている。ところが,それは日本ではあまり普及していない。その理由を「これまでのシステムは,機能の融合が足りなかったのではないか」と村田社長は見る。

 ところが「SIPの登場によって,コミュニケーションの在り方が変わってくる」と村田社長は考える。SIPによってIP電話だけでなく,インスタント・メッセンジャやテレビ電話,ファイル転送なども統合的に扱えるようになる。こうしたツールによってオフィスのコミュニケーションが変わってくるというのだ。

 こうした想定の元に,ソフトフロントは経営資源をSIPの基礎技術およびミドルウエアの開発に集中させる戦略を打ち出した。これまでは,SIPを用いたシステム・インテグレーション,カスタマイズも請け負っていた。しかし,インテグレーションに限られたエンジニアを割いてしまうと,基礎技術の開発がおろそかになる。常時,6,7人の技術者がSIPの開発動向をウォッチして,技術研究を進める必要があるというのだ。

 そこで,SIP技術を用いたインテグレーション,カスタマイズは「SIPパートナープログラム」契約を結んだ協力企業にゆだねる。SIPパートナープログラムとは,ソフトフロントが開発したSIP技術を一定料金で,ライセンシングし,個別ユーザーへのカスタマイズ,応用製品を開発を任せる事業である。これによって,ソフトフロント自体は常に最先端のSIP技術を開発しながら,ライセンシングによって売り上げを立てていこうという作戦だ。果たして日本のオフィス・コミュニケーションは変わるのか。SIPパートナープログラムの成否にかかっているのかもしれない。

(和田 英一=IT Pro)