写真1●低価格な生徒用パソコンを狙う「eランドセル」の試作機 “Wintel”ではなく組み込みシステム「T-Engine」を用いて,低価格を実現する


 「教室で生徒1人1人にパソコンを使ってもらうには,今までのパソコンは高すぎる」――そんな発想から,米IntelのCPU,米MicrosoftのOSの組み合わせ,いわゆる“Wintel”仕様をやめて,組み込みシステムを用いたパソコン「eランドセル」(TEA端末)を,ピンチェンジが開発,試作機を初公開した(写真)。T-Engineフォーラム(会長:坂村健東京大学教授)が規格化したプラットフォーム「T-Engine」を用い,「数万円の下の方」(坂村会長)の価格で製品化を狙っている。

 「eランドセルは教科書そのものではなく,補助教材という位置付け」(ピンチェンジのテクノロジプロモーター八幡勇一氏)。インターネットから情報を収集したり,パソコン用に開発された教材などを表示させるという。2003年度に東京都区内の複数の小中学校で,eランドセルを試験的に導入して実証実験を行う。

 eランドセルはノートパソコンの画面部分を伸ばして,キーボード部分と平らにしたような形。IEEE802.11b仕様の無線LANを内蔵して,ワイヤレスで利用する。「教室で数十台の無線端末を動作させて,うまく通信できるのか検証するのも実証実験の目的の1つ」(八幡氏)。

 キーボードは,JISキーボードとほぼ同じ配列のキーボードを採用している。通常のパソコンを使うようになってとまどいを感じさせないためとしている。画面にタッチパネルを採用しなかった理由としては,タッチパネルはガラスが必要だが,重くなるとともに,割れる危険性もあるし,コスト高になるとしている。

 T-Engineは,TRONをベースにしたリアルタイムOS「T-Kernel」とミドルウエアで構成する。各種の組み込み用CPUで動作するように開発が進められている。T-Kernel上ではCPUによらずミドルウエアを利用できるのが特徴である。eランドセルでは日立製作所の組み込み用CPU「SH-4」を用いる。こうしたベースがあったため「比較的短時間で開発できた」(八幡氏)

 なお,ピンチェンジは松下電器産業が2001年8月1日に設立したベンチャー企業。外部のベンチャー企業と連携して,「暮らし環境ソリューション」を開発するための事業会社として設立された。

(和田 英一=IT Pro)