写真1●大画面テレビで利用する画像伝送ソフト「DVcommXP」 テレビ画面中左上の小さなウインドウが,こちらから送信している映像のモニター画面


写真2●販売元の電通国際情報サービスに設けられた「どこでも小窓」 約2km離れた事業所間をDVcommXPでつないでいる。思い立ったときテレビ会議を始められるという


写真3●2カ所からの映像を受信 首都高を見下ろすフルスクリーンの映像と,隣のミーティング・スペースの映像(画面中央上)を同時に受信することもできる。左上はこちらから送信している映像


 ファットウェアは,家庭用のDVカメラをパソコンに接続してWebカメラとして利用できるソフト「DVcommXP」を開発,3月18日から電通国際情報サービスが販売する。DVカメラで撮影した映像を,圧縮せずにそのまま伝送する。このためきれいな映像を送ることができるが,30Mbps以上の帯域が必要。

 DVcommXPのベースとなったのは,「DVTS(Digital Video Transport System)」と呼ばれる,WIDEプロジェクトを中心に開発されたフリー・ソフト。パソコンにIEEE1394インタフェースで接続したDVカメラの映像を,30Mbps以上のLANまたは回線で他のDVTS搭載パソコンに伝送する。この際に,DVフォーマットのままで送るため,DV品質を維持したまま,再生できる。

 DVTSはこれまでに2万以上のダウンロード実績があるという。超高速ネットワーク実験プロジェクトJGN(Japan Gigabit Network)で数多く用いられている。これはDVTSが数十Mbpsの帯域を用いる数少ないアプリケーションの1つだからである。

 DVcommXPは,このDVTSの商用版として開発された。DVcommXPはパソコンの性能にもよるが,双方向通信ができ,テレビ会議システムとして使える(写真1)。販売元の電通国際情報サービスでは,「どこでも小窓」として東京都中野区の本社と約2km離れた西落合オフィスとをDVcommXPで常時接続している(写真2)。2.4GHzのPentium 4搭載パソコンであれば,映像を送信しつつ,2カ所からの映像を受信してパソコン画面に表示させることができる(写真3)。

 映像,音声のデータはTCPではなくUDPで伝送する。このため伝送に失敗したパケットは再送されない。映像のパケットであれば,パケット・ロスが起きてもあまり気にならないが,音声のパケットが失われると,チリチリ音がして聞きづらくなる。そこで,DVcommXPでは標準設定で,同じ音声パケットを2つ送ることによって,音声の品質を確保している。どちらか片方のパケットが失われても,音は途切れなくなる。

 DVcommXPの対応OSは,Winodws XP Home EditionまたはWindows XP Professional。画像を送信したり,受信画像をテレビなどに表示する場合にはパソコンにIEEE1394インタフェースが必要。

 IPv4だけでなく,IPv6でも通信できる。「今後はIPv6でIPsecを用いて,セキュアな画像伝送を実現したい。大事な社内会議を盗聴されてはいやですから」(電通国際情報サービス,e-テクノロジー統括部 先端技術研究グループの熊谷誠治 主幹研究員)

 DVcommXPの価格は9800円。サイト・ライセンスもある。3年間で1億円の売り上げを見込む。

(和田 英一=IT Pro)