日本音楽著作権協会(JASRAC)と日本レコード協会(RIAJ)は1月22日,電子透かしを利用して,違法のオーディオ・ファイルを自動的に見つけ出すシステムの実証実験に成功したことを明らかにした。このシステムを実用化すれば,インターネット上の違法ファイルを効率的に見つけられるようになる。

 電子透かしとは,画像や音声などの電子データに,特別な情報(“透かし情報”)を埋め込む技術のこと。特別な処理を施さない限り,画像や音声ファイルに透かし情報が含まれていることは分からない。また,ファイル・タイプを変換したり,ファイルを圧縮したりしても,透かし情報は維持される。

 違法ファイルを見つけ出す実験は,2002年12月に実施された。実験手順は次の通り。まず,3種類(曲)の市販CD音源に,IBM,エム研,マークエニー・ジャパン,日本ビクター4社それぞれの電子透かしを施して楽曲を特定する情報を埋め込み,それぞれをMP3ファイルに変換した。

 その後,12種類(3曲×4社の電子透かし)の実験用MP3ファイルを,インターネットに接続した実験用Webサイトにアップロードした(サイトのURLは非公開)。

 そして,電子透かしを取り出す機能(“デコーダ”などと呼ばれる)を組み込んだ「J-MUSE」システムで,電子透かしを施したオーディオ・ファイルを自動的に検出できるかどうかを調べた。実験の結果,100%の検出率を実現できたという。

 J-MUSEとは,2000年中ごろからJASRACが実運用している“違法著作物データ監視システム”のこと。インターネット上のファイルを収集し,その中から違法のオーディオ・ファイルを見つけるとともに,そのファイルが置かれているサイト情報などをデータベース化する。違法ファイルが置かれているサイトに対しては,そのサイトを管理するISPなどに連絡して,ファイルをダウンロードできないようにしてもらうという。

 J-MUSEでも,検索やオーディオ・ファイルの選別は自動化しているものの,そのファイルに含まれる楽曲が,JASRACが権利を管理しているものかどうかは人手で判別する必要があった。しかし,CD音源にあらかじめ電子透かしを施しておけば,今回のシステム(デコーダを組み込んだJ-MUSE)で自動的に判別できるようになる。

 現在,J-MUSEは1カ月に540万のファイルをチェックする性能を持つ。「システムのディスク容量などにも依存するが,(今回のシステムでは)作業負荷を軽減できるので,より多くのファイルをチェックできるようになるだろう」(JASRAC 常務理事 加藤衛氏)

(勝村 幸博=IT Pro)