「インターネットに流れるデータの1割から2割は,スパムやウイルスといった“ノイズ”だ。ISPとユーザーが協力して,インターネットをクリーンアップする必要がある」――。米SymantecのSymantec Security Response Asia Pacific Regional ManagerであるDavid Banes氏は11月22日,IT Proの取材に対して,インターネットのノイズの現状について答えた(写真)。同氏の発言要旨は以下の通り。

スパム,ウイルスがノイズの原因

 米Symantecでは,ISPや調査会社からの情報と,同社がインターネット上に設置しているセンサーからの情報を基に,インターネットに流れる不要なデータ――すなわち,ノイズ――についての研究調査を開始した。まだ調査を開始したばかりで収集したデータが少ないために確かなことはいえないが,ネット上を流れるデータの10%から20%がノイズであると考えられる。

 ノイズとなっているトラフィックは,(1)大量のメールを勝手に送信して感染を広げるタイプのウイルス(ワーム),(2)スパム・メール(要求しないのに勝手に送られてくる,広告などのメール),(3)DoS(サービス妨害)攻撃,(4)クラッキング――などである。特に,ウイルスとスパムが大きな割合を占めているようだ。

 こういったノイズによって帯域が圧迫されると,ネットの体感速度が遅くなり,ユーザーの利便性は低下する。さらに,ISPが回線を増強する必要に迫られ,そのコストはユーザーが最終的には負担することになる。

 実際,私もノイズによってインターネットの利用料金を増やされている。オーストラリアの自宅で使用しているインターネット接続の料金は,送受信するデータ量で変わる契約をしている。あるデータ量までは一定料金なのだが,それを超過するとデータ量に比例して課金される。最近では,やり取りしている“正規”のデータ量は変わらないのだが,勝手に送られてくるウイルスやスパムの数が増えているために,毎月料金が増加している。

ISPとユーザー両方の取り組みが重要

 こういったノイズを減らすためには,インターネットの“上流”,すなわちISPで対処することが重要である。しかし,実際にはあまり対処されていないのが現状である。フィルタリングのための設備を導入するにはコストがかかるからだ。特に,ユーザーを多数抱えるISPにとってはばく大なものとなる。

 さらに,フィルタリングによりネットワークのスループットが低下する恐れもある。そのため,必要性が分かっていても,実際にはフィルタリングのサービスを提供することが難しいようだ。とはいえ,今やネットのノイズは大きな問題である。ISPは他社の差別化を図るためにも,フィルタリングのサービスを導入する必要性に迫られるだろう。

 実際,中小規模のISPは設備の導入にそれほどコストがかからないこともあり,差別化のためにフィルタリングのサービスを導入するところが増えている。

 ISPに任せてばかりもいられない。インターネットを快適に使用するためには,ユーザーの取り組みも重要である。ウイルス対策やクラッキング対策をきちんと施して,自分がノイズの発生源にならないよう注意しなければならない。

 インターネットのノイズに関する研究調査はまだ始めたばかりであるが,1年後の「AVAR」(アジアのウイルス研究者やアンチウイルス・ベンダーなどによる,ウイルス対策の国際会議)では,もっと詳細なデータや対策方法などについて紹介できるだろう。

(勝村 幸博=IT Pro)