筆者は「やっぱり多い私的メール利用者,ただし56%が監視に「条件付き賛成」と回答」という記事を10月30日に掲載した。今回はその詳細版をお送りする。10月30日の記事と重複する部分もあるがご了承いただきたい。

 本調査は2002年10月3日から10月14日まで実施。日経BPコンサルティングの調査モニターあてにアンケート協力依頼メールを配信するとともに,IT Proのトップページや配信メールでも告知した。有効回答数は9754件だった。

◆大企業ほど明示的に私的メールを禁止

  図1-1 勤務先での私的メール禁止状況。回答者数:9754人。
 

 まず,私的メールは勤務先で禁止されているのかを見てみよう。もっとも多かったのは「勤務先では私的メールを禁止していない(黙認)」との回答で,34.2%あった(図1-1)。続いて多かったのが「明文化はされていないが暗黙的に私的メールが禁止」という回答である(33.7%)。勤務先のセキュリティ・ポリシーなどで明示的に禁止している,という回答は全体の18.1%に留まった。禁止されているのか分からないという回答者も12.7%いる。

 勤務先の属性で見てみると,禁止/黙認の割合は従業員数ときれいに対応している。従業員が多いほど私的メールを明示的に禁止している割合が多く,逆に禁止していない割合は少ない(図1-2)。

図1-2 従業員数別に見た私的メールを禁止している割合。回答者数:9698人。

 従業員1000人未満の勤務先では,明示的に禁止するよりも黙認する方が多いが,1000人以上の勤務先になると逆転して,明示的に禁止の方が多くなる。5000人以上の勤務先では,暗黙の禁止をも上回って明示的に私的メールを禁止している。その割合は38.8%にのぼる。これは従業員が多い勤務先ほど,職務規程やセキュリティ・ポリシーなどが整備されてあり,その中で明示的に私的メールの利用禁止をうたっていることが多いと考えられる。

 勤務先の業種別に見てみると,業種によってもかなりの開きがあることが分かった(図1-3)。もっとも厳格なのがコンピュータ,周辺機器製造業である。明示的に私的メールを禁止しているのは業界別最高の40.7%にのぼり,黙認しているのは15.3%と,こちらも業界別最低である。

図1-3 業種別に見た私的メールを禁止している割合。回答者数:9724人。

 コンピュータ,周辺機器製造業の対極に位置するのが病院,医療機関と大学,研究/教育機関である。病院,医療機関は明示的に私的メールを禁止しているのが業界別最低の2.9%。暗黙のうちに禁止しているのが業界別最低の23.6%(その他の業種・産業)とほとんど変わらない23.7%。黙認しているのは業界別第2位の45.9%と多い。

 黙認の業界別トップが大学,研究/教育機関である。ちょうど半分の50.0%が私的利用を黙認している。明示的に禁止しているのは,2番目に少ない6.0%である。

◆3分の1以上が恒常的に掟破り

  図2-1 勤務先で私的メールを利用している頻度。回答者数:9724人。
 
 
  図2-2 私的メールが明示的に禁止されているにもかかわらず,私的メールを利用している頻度。回答者数:1768人
 
 
  表3-1 役職別に見た,掟破り度。
 
役職 掟破り度
経営者・役員クラス 26.9
部長・部次長クラス 40.2
課長クラス 34.4
係長・主任クラス 39.3
一般社員・職員 38.7
契約・嘱託・派遣など 22.1

 こうしたルールが設けられている中,ネット・ユーザーはどの程度,勤務先で私的にメールを利用しているのだろうか。全体で見ると,ほぼ毎日,私的メールを使っている人はおよそ3分の1の31.0%になる(図2-1)。以前から私的メールは勤務先で使っていない人は20.6%いた。

 利用動向でもっとも気になるのが,“私的メール禁止令”と利用動向の相関だろう。明示的に禁止されているにもかかわらず,私的メールをほぼ毎日使っている人は26.6%,2~3日に1回程度使っている人は10.4%いる(図2-2)。2~3日に1回以上私的メールを使っている人を“恒常的”に使っているユーザーと呼ぶならば,両者を合わせた37.0%が恒常的に“掟破り”をしていることになる。

 暗黙に禁止している勤務先でも毎日使っている人は28.1%,2~3日に1回程度使っている人は10.7%いる。恒常的な準掟破りは38.8%となる。

 私的メールを黙認している勤務先では,半数以上の52.2%が恒常的に私的メールを使っている。

◆部長・部次長クラスの“掟破り度”がトップ

 私的メールの利用状況を年代別に見ると,20才代後半がもっとも勤務先で私的にメールを利用している。それ以降,年代が上がるにつれて私的にメールを利用する率はおおむね高まっていく。

 業種別に見ると,コンサルティング,SI,VARや通信サービスでは比較的自由に使っている。逆に官公庁など公共機関,団体や病院,医療機関そして金融,証券,保険業では私的メールの利用は少ない。

 明示的に私的メールが禁止されているのに,2~3日に1回以上勤務先で私的メールを使っている人の割合を“掟破り度”と呼ぶことにする。先に述べた全体で37.0%は全体の掟破り度は37.0とするのだ。

 まず,業種別に“掟破り度”を見てみよう。官公庁など公共機関,団体が11.4%ともっとも掟破り度が低く,さすがは公務員と安心した。逆にコンサルティング,SI,VARは47.2%ともっとも掟破り度が高い。コンサルティング業者は顧客にセキュリティ・ポリシを説く前に,自ら襟を正さなくてはならないだろう。

役職別に見た掟破り度も興味深い(表3-1)。もっとも掟破り度が高いのは部長・部次長クラスである(40.2%)。もっとも低いのは契約・嘱託・派遣など(22.1%)で,経営者・役員クラス(26.9%)がそれに続く。経営者・役員クラスは順法精神が比較的身に付いているといえよう。今の部長さん,部次長さんは順法精神を身につけないと役員にはなれないかもしれない。


◆3分の2が就業時間を気にせず利用

 私的メールを使うにあたっては就業時間を気にしているのだろうか? 全体で見ると「気にしない」という声が3分の2の65.1%にのぼり,就業時間外に使うようにしている人は3分の1の29.9%であった。

 明示的に私的メールを禁止している勤務先に限ってみると,どうだろうか。この場合でも時間を気にしないで利用する回答者が一番多く,57.7%だった。就業時間外に使っているユーザーは35.7%。これは暗黙禁止の勤務先よりも少ない数字である。暗黙禁止の勤務先では36.8%が就業時間外に使っており,暗黙のルールに対する遠慮がうかがえる。

 黙認している勤務先ではもう,お構いなし。73.4%が就業時間を気にせずに利用しており,就業時間外に使っている人は22.0%になる。その差,51.4を“気にしない度”と呼ぶことにして,これからの分析に使っていこう。つまり

  気にしない度=就業時間を気にしないで使っている割合
         -就業時間外に使っている割合

である。

 全体の気にしない度は35.2,明示的に禁止している勤務先は22.0,暗黙禁止の勤務先は22.3,黙認している勤務先は51.4となる。

◆就業時間を気にかけずに使う経営・社業全般部門

 属性別に見ると所属部署による気にしない度の違いが比較的大きかった。もっとも気にしない度が低いのは製造・生産技術部門で17.5。もっとも高いのは経営・社業全般部門で60.9だった。

 製造・生産技術部門では,たしかに生産ラインに張り付いていたら私的メールどころか,業務上のメールも読み書きできないだろう。気にしない度が低い,つまり就業時間をもっとも気にしてメールを利用して当然と解釈できる。

 製造・生産技術部門のほかに,総務・庶務部門,経理・財務部門も気にしない度が低い。どちらも規則に則って業務を遂行することがもっぱらな部門だけに,気にしない度が低くて当然という気がする。

 経営・社業全般部門のほかに気にしない度が高かったのは,経営企画・事業開発部門,広報・宣伝部門である。これらの部門はクリエイティビティが要求され,オンとオフの区別を付けづらいことから,このような結果になったのではないかと思われる。

 業種別では,病院,医療機関の気にしない度がもっとも低く8.5。一番高いのは通信サービス業で48.4だった。病院,医療機関も製造・生産技術部門と同様に就業時間中はパソコンの前にいることはほとんどなくて,診療や治療に従事しているため低い数字になっているのだろう。逆に通信サービス業は,メールが使える環境で業務をこないしていることがほとんどなのだろう。

◆「緊急性がある場合は時間にとらわれずに使う」

 私的メールを使うにあたって就業時間を気にするかの選択肢には「その他」を設けて,自由に記入してもらった。そこを見ると,「緊急性がある場合は時間にとらわれずに使う」という意見が圧倒的に多かった。

 ほかに目立った意見は,私的メールは会社のアドレスを使わずに個人のメール・アドレスを使うというものである。そのやり方としては,Webメールを使ったり,勤務先に持ち込んだ自分のノート・パソコンでPHSで接続したりしている。

 このほかに寄せられたユニークに意見を列挙してみる。
「数分以内に返信可能であれば返信する」
「件名のフィルタリングに引っかからないように,件名に気を使っている」
「就業時間よりも業務に支障をきたすかどうかで判断している」
「自分からは発信しない。返信は時間外に使うようにしている」
「タバコを吸わないので,その代わりの気分転換として」
「自分の会社だから関係ない」

◆3分の1以上が「私的メール禁止は当然」

  図7-1 勤務先が私的メールを禁止することについての考え。回答者数:9754人。
 

 勤務先が私的メールを禁止することについて,ネット・ユーザーはどのように考えているのだろうか? 選択肢としては,「勤務先が私的メールを禁止するのは当然である」「就業時間外の利用は認めてもらいたい」「勤務先は私的メールを禁止する必要はない」「どちらでも良い」「その他」の5つを用意した。

 全体としてもっとも多いのは,「禁止は当然」という意見で,3分の1を超す35.6%を占めた(図7-1)。続いて,「時間外は認めてほしい」と「禁止する必要はない」がほぼ同数の2割程度だった。

 先に見たように,3分の1が勤務先で恒常的に掟破りをしている実状を考えると,どうもこれだけではふに落ちない。もう少し分析を進めてみよう。

 恒常的な掟破りグループ,つまり明示的に私的メールを禁止されているにもかかわらず,2~3日に1回以上,勤務先で私的メールを使っている人々は654人いた。これらの回答者の私的メール禁止に対する意見を見ると,意外にも「禁止は当然」が48.0%もいる。平均よりも10ポイント以上高い数字である。「禁止する必要はない」は17.6%で平均よりも若干少ない。

 恒常的な掟破りグループにとって,私的メールは禁止という勤務先の方針は大いに認めつつも,「分かっちゃいるけど止められない」ものなのだろうか。あるいは「原則は禁止だが,ある程度の私的メールは許容されるべき」と“自主的に”解釈しているのかもしれない。

 掟破りグループに対する“遵守グループ”の意識も念のために見てみよう。明示的に私的メールは禁止されていて,勤務先で私的メールは使っていないグループである。これには過去には使っていたが,現在は使っていないという人も含まれる。遵守グループでは,さすがに「禁止は当然」という声は高く,75.1%に達する。「禁止する必要はない」は少なくて4.2%しかいない。

 これとは別に,年代別に私的メール禁止に対する意識を見てみると,20代,30代では年齢が上がるとともに「禁止は当然」という声が高まる。20代前半では21.0%だが,30代後半では35.9%に増えているのだ。40代,50代では「禁止は当然」は40%前後でほぼ同じ。60代になると47.4%に上がっている。

 これは役職が上がるにつれて,「禁止は当然」という意識が高まっていくと思うと,そうとも言い切れないようである。一般社員・職員から係長クラス,課長クラスまでは順調に「禁止は当然」が増えていくが,課長クラスがピーク。部長・部次長クラス,経営者・役員クラスになるとかえって「禁止は当然」が減っていく。

 「禁止する必要はない」を見てみると,なんと経営者・役員クラスが一番多いのである。これは経営者・役員クラスとなると,いったんルールとして決めてしまうと守らなくてはならないが,私的メールは使っているのでそんなルールは作りたくない。でも,稟議で私的メール禁止案が上がってきたら,表だって反対はできないので,できればそんな提案は持ってきてもらいたくない――というのが経営者・役員クラスの真情ではないだろうか。

◆「業務に支障がなければ良いのでは」

 私的メールの利用について,その他の自由記入欄に書かれた意見を見てみよう。「禁止して当たり前」から「禁止すべきでない」まで様々な意見をお寄せいただいた。比較的多かったのが,「業務に支障がなければ良いのでは」というものである。

 また,「公私の区別をつけるのが難しい」という意見もある。私的なメールからビジネスに結びついたり,仕事上の情報をつかむこともある。「取引先への休日ゴルフの案内は私的か業務か?」といったように公私のグレー・ゾーンの指摘である。「メルマガは業務に直接関係なくても客先での話題や自己啓蒙に有効だ」という意見もある。「社内の同期生や友人との簡単な私的メールは許容範囲だと思う」という解釈もあった。

 このほか,ユニークな意見をいくつか列挙してみよう。
「私的メールを禁止する前に,私的内容の電話を禁止するべき」
「家族への連絡には勤務中の携帯電話より良いと思う」
「雇い主がサーバーをチェックして人事考課の参考にすればよい」
「仕事の気晴らしに利用しているので禁止は困る」
「個人のモラル向上を徹底したほうが効果的」
「職種により条件が違うと思う」
「友人に会社のメールアドレスを教えるのは恥ずかしい」
「ネットワーク資源に過度の負担をかけなければ問題ないと思う」
「最近はメール経由で感染するウイルスが多いので,ITスキルが不足している社員による感染が心配」

 数が多かった「業務に支障がなければ構わないのでは」という意見のバックグラウンドには,「勤務先は私的メールで生産性が低下するから禁止しようとする」という考え方が見え隠れする。私的メール禁止には「勤務先の情報漏えいを防ぐ」という目的もある。実際,「会社の情報を漏えいしなければ,問題ない」という指摘もいくつかあった。情報漏えい対策にはメールの監視が欠かせない。後半では「メール監視」について考える。

◆2割がメール監視を認識するも,4割は「分からない」

  図9-1 勤務先が受信メールを監視しているか。回答者数:9754人。
 

 「私的メールの禁止」と並ぶ本調査のもう一つのテーマである勤務先でのメール監視についてアンケート結果を見てみよう。勤務先がメールを「監視している」と答えた人は2割(図9-1)。「監視していない」「分からない」という人はどちらもおよそ4割だった。

 勤務先の従業員数別に見ると,私的メールの明示的禁止と同様に,従業員数が多い勤務先ほどメール監視をしている。これは明示的禁止の傾向からある程度,予想はできることだった。

 注目すべきは,メール監視が増えるとともに,それを上回る数字で「分からない」という回答が増えている点だ。5000人以上の勤務先では,45.3%が「監視しているかどうか分からない」と答えている。「監視している」という回答は40.9%なのにである。もし「分からない」と回答した人の勤務先が実際にメールを監視していたら,5000人以上の勤務先では合わせて86.2%がメールを監視していることになる。

 今度は業種別に分析する。「分からない」が比較的多く,実際には監視している可能性を否定できないので,「監視している」と「分からない」を合わせたものを「監視しているかも知れない度」として,ランキングを作ってみた。結果,私的メールの禁止と同じく,コンピュータ,周辺機器製造業がもっとも監視しているかも知れない度が高かった。以下,金融,証券,保険業,電気,ガス,水道,その他の製造業とトップ4は明示的禁止ランキングと同じ顔ぶれが並ぶ。

 監視しているかも知れない度がもっとも低いのは病院,医療機関で,これも明示的禁止ランキングと同じだった。ほかの業種についてもまったく同じランキングではないにしてもおおむね2つのランキングは似た傾向にある。そこで,明示的禁止とメール監視の関係については詳しく調べてみよう。

◆私的メールの禁止とメール監視の関係

 私的メールの禁止とメール監視をクロス集計してみると「勤務先ではメール黙認&非監視」の回答者がもっとも多く全体の22.9%を占める。メールを監視されている回答者では,黙認→暗黙の禁止→明示的禁止の順で増えている。逆にメールを監視されていない回答者はちょうど反対の順で増えている。私的メールを明示的に禁止されている回答者のうち,メールを監視されている回答者は監視されていない回答者の3倍存在するのだ。

 今度は業種別に見てみる。私的メールを明示的に禁止している割合(X軸)が高いほど,メールを監視している割合(Y軸)が高いことが見て取れる。ほぼ一直線に各業種が並ぶのだ。もっとも私的メール禁止&メール監視を行っているのはコンピュータ,周辺機器製造業で,もっとも行っていないのは病院,医療機関である。

 官公庁など公共機関,団体は私的メールを禁止しているわりにはメールを監視していない。逆に通信サービス業ではメールを監視しているわりには,私的メールの明示的禁止は少ない。

 官公庁など公共機関,団体の回答者のメール監視に対する意識を調べてみると,メール監視に賛成する人は平均よりもプラス5.5ポイント,条件付き賛成の人はマイナス6.3ポイント,反対の人はプラス0.7ポイントの割合でいる。監視されている気分に関しては,当然と思う人は平均よりもプラス2.8ポイント,いやと思う人は平均よりもプラス1.3ポイント存在する。こうしてみると,とりわけメール監視に対して拒絶的な業種ではないようである。すると官公庁など公共機関,団体は,まだ私的メールを禁止するようになったばかりで,メール監視まで至っていないということが考えられる。今後はメール監視の割合も高まるのではないだろうか。

 通信サービス業について考察してみよう。通信サービス業ではメールの規制/監視に対する拒絶反応が高い。私的メールの禁止に反対の人は全業種の中でもっとも割合が高く,31.2%存在する。賛成の人は全業種の中で2番目に少ない(1番少ないのは病院,医療機関)。メール監視については反対の人は2番目に多く,賛成の人も2番目に少ない(ちなみに,反対が一番多く,賛成が一番少ないのは大学,研究/教育機関)。

 このように通信サービス業では,メールの規制/監視に対する拒絶反応は高い。メールで何をやってもいいが,監視をしているので何かあったときには責任を取らされるという風潮が強いようだ。

◆「分からない」は“抑止力”になる

 実際には監視していなくても,従業員・職員に「監視しているかも知れない」と思わせることで,高価なメール監視システムを導入しなくても同じような効果を得られるのでは,と期待する経営層,情報システム部門がいるかもしれない。実際に私的メールの利用についてはある程度効果があるといえる。

 私的メールの利用状況と監視しているか否かのクロス集計を取ってみた。すると「監視していない」グループの中で,ほぼ毎日私的メールを使っているのは32.5%であるのに対し,「分からない」グループの中では26.7%に留まる。「監視している」グループでも32.5%が毎日私的メールを使っているので,監視しているのかどうか分からない方が“抑止力”が高いといえよう。

 もっとも,各グループごとに私的メールを使うにあたって就業時間の「気にしない度」を見てみると,分からないグループの気にしない度は32.9で,監視しているグループの27.1よりも高かった。監視しているから分からないといって私的メールの利用時間までは自己規制していないようだ。

◆半数以上がメール監視に「条件付き賛成」

  図12-1 勤務先がメールを監視することに賛成か。回答者数:9754人。
 

 こうした勤務先によるメール監視に対して,ネット・ユーザーはどのように感じているのだろうか。まず,賛成/反対について見てみる。全体では「条件付き賛成」が半分を超える56.0%を占める(図12-1)。メール監視に反対する人は24.2%。賛成する人は14.3%だった。

 条件付き賛成が全体の半数を占めるわけだが,その条件とはどのようなものだろうか。選択肢としては
・監視方法が公にされている
・監視方法について労働組合が同意している
・個人情報の保護ルールが明らかになっている
・人手による監視ではなく,機械的に監視する
・監視結果を本人に通知する
・その他
の6つを用意し,条件付き賛成の人に回答してもらった。

 その結果,「個人情報の保護ルールが明らかになっている」「監視方法が公にされている」の2つが圧倒的に多く,「監視結果を本人に通知する」「人手による監視ではなく,機械的に監視する」が続いた(図12-2)。

図12-2 メール監視に賛成するにあたっての条件。複数回答可

◆4割が監視されるのは「いや」

 「勤務先が発信メールを監視しているとしたら,どのように感じるか?」も聞いてみた。全体では「いやな思いがする」という意見がもっとも多く43.5%に達する。「気にしない」という人は4分の1を超える26.6%だった。「当然」と受け入れる人は,それよりも少なく23.3%だった。監視の中止を求める人は3.5%いた。

 前項の監視は賛成か,反対かという設問とクロスを取ってみると,立場の違いが歴然とする。監視賛成派では70.9%が監視を当然とする。逆に反対派では当然はたったの1.5%。いやと思う人は73.4%に達する。当たり前といえば当たり前の結果ではある。ここで注目しておきたいのは,反対派では「中止を求める」が11.7%,「勤務先を辞める」という人が2.4%いた点だろう。

 条件付き賛成派は,平均とほぼ同じ傾向を見せるが,「気にしない」が35.4%と平均よりも若干高めだった。どのような方法で監視されているかが分かっていれば,とくに気にしないということなのだろうか。

 年代による違いも顕著である。年齢が上がるとともに「いや」という人の比率は下がり,「当然」と思う人の比率は高まるのだ。20代前半では,「いや」という人は62.9%にのぼり,「当然」と思う人は11.5%しかいない。対して65才以上では,「いや」は23.7%に減り,「当然」は39.5%に増加している。これまでの年代別分析と同じような傾向が出ているといえよう。若年層は年を重ねるにつれて,上の世代と同じような考え方になるのか,それとも考え方は変わらないのか,時間をおいてまた調査してみたい。

(和田 英一=IT Pro)