家庭にネットワークが入り込むとどのようになるのか? パソコン・メーカーや情報家電機器メーカーが構想や製品像を語ることは多いが,それ以外のメーカーはどうだろうか?

 10月16日から始まる日経BP社主催の展示会「WPC EXPO 2002」では,住宅/住宅機器メーカーなどの視点から家庭のネットワーク化を探ってみるコーナーが設けられる。東京ビッグサイト,西1ホールの「デジタルホームゾーン/Connected Home Showcase」である。出展各社はどのような提案をするのか,事前情報をもとに各社の内容を簡単に紹介しよう。

■情報機器を組み込む大和ハウス工業

 情報機器が家庭内に入ってくると,それを受け入れるように家そのものも変わっていくべきだと提案しているのが大和ハウス工業である。キーワードは“組み込み”だ。もちろん,ここでは機器の中に何かを組み込むのではなく,家の中に情報機器を埋め込んでしまおう,というものである。

 “組み込み”を端的に示したものが「ホーム・サーバー組込型ダイニング・ボード」である。ダイニングの壁面を飾るダイニング・ボードにホーム・サーバーをはめ込んでしまおうというものだ。

 ホーム・サーバーはインターネットにつながる回線と家庭内の情報機器とを結ぶ“かなめ”となる機器で,ケーブルが集中する。今までのように機器をどんと置いては,その回りがケーブルだらけになって見苦しい。

 電力線や電話線などは壁面に組み込まれて,コンセントだけが各部屋に出ている。電気や電話が家庭に入りだしたころは,このようにはなっていなかったのだろうが,電気や電話の普及に伴い,今のような形になってきた。電力線/電話線そのものだけでなく,安全弁となるブレーカーなども家には当然,ついているものになった。コンセントやモジュラ・ジャックにつなぐだけで機器を安全に使えるようになっている。

 こうしたものと同じように情報機器も家庭で簡単に使えるように,家の方も対応しようというわけだ。情報機器のサイズは,各社によってまったく違っているがカーコンポと同じ横幅,高さにして,メーカーが違っても簡単に組み込めるようにしてはどうかという提案もしている。

 もう一つの組み込みでおもしろいのは,レンガ・サイズの「Web対応玄関カメラ」である。最近は玄関回りはレンガを使うことが多いのでレンガ・サイズにしたという。玄関カメラのサイズに合わせて,レンガを切ったりすることなく,組み込めるという。Web対応という部分については,動画対応携帯電話のFOMAでカメラの映像を確認できる。

 このほか,パソコンのモニターを窓枠にはめ込む「ネットウィンドウ」というのも提案している。Winodwsが動いていたら,そのまんまじゃんという気もしなくはないが,インテリアの一部としてとけ込ませるということだ。

■IT対応邸宅を建築中の東急不動産

 東急不動産は現在,販売中の住宅地におけるITの取り組みを紹介する。同社は千葉市に「あすみが丘東」という住宅地を作っている。そこに建築される戸建て住宅では,1ギガビット・イーサネット対応の先行配線を行い,各部屋にLAN用のコネクタを設けるという。有線だけでなく,無線LANのアクセス・ポイントも用意して,どこでもネットワークを利用できるようにする。

 もちろんインターネット接続サービスもついていて,最初の6カ月は無料でインターネットを使えるという。

 住まいのインターネット対応といえば,“インターネット・マンション”が先行して話題になっていたが,戸建て住宅にもいよいよ広がってきたかという感がする。

■照明をIPv6で制御する松下電工

 松下電工は次世代のインターネット基盤技術IPv6を使って家庭やオフィスの照明などを制御するデモを行う。これから蛍光灯や電球を一つずつ個別に遠隔操作するには,それぞれの機器にIPアドレスを割り振ってしまった方が管理が楽になるという。しかし,現在のIPv4アドレスではIPアドレスの個数が足りない。そこでIPv6を導入して,IPv6アドレスで一括管理できるようにする。

 とはいえ,電球一つ一つに直接IPv6アドレスを付けようとすると,電球一つ一つに通信機能を持たせる必要が出てくる。1個数百円の電球に見合うほど通信制御モジュールは安くなっていないため,コスト面で引き合わない。そこで制御コントローラで複数の電球を制御し,インターネットから制御コントローラを見ると,電球一つ一つにアドレスが付いているように見せる。

 こうした制御のために松下電工は通信制御モジュール「EMIT(Embeded Micro internet Technology)」を開発した。これは各種の汎用マイコンを使いながら,ミドルウエアを規定して機器のプラグ&プレイを実現しようというモジュールである。通信プロトコルとしてはIPv6,伝送媒体としてBluetoothなどに加えて電力線も用いるところが特徴だ。

■FTTHを提供する東京電力

 東京電力は光ファイバによるインターネット接続サービス「TEPCOひかり」を紹介する。ADSL回線は家庭で一人しか使っていないときは速度的に満足できるが,複数の人が同時に使うようになってくると,最大12Mビット/秒では物足りなくなってくる。

 東京電力が2002年3月29日から始めたTEPCOひかりでは100Mビット/秒の通信速度でインターネット接続を実現する。現在のコンテンツのデータ容量からすれば,家庭で複数の人が利用するには余裕の速度だ。デジタルホームゾーン/Connected Home Showcaseでは,サービス内容や今後のエリア拡大予定などを紹介する。

■テレビ電話を実演するソフトフロント

 ソフトフロントは家庭がネットでつながるようになった時のアプリケーションの一つとして,テレビ電話を実演する。ソフトフロントが9月25日に発表したばかりのパソコン用のIPテレビ電話システム「KISARA Personalソリューション」とWindows CE用IP電話ソフト「KISARA Mobileソリューション」である。

 通信制御方式としてマイクロソフトのWindows Messengerでも採用されているSIP(Session Initiation Protocol)を用いている。またIPv4だけでなく,IPv6にも対応する。デジタルホームゾーン/Connected Home Showcaseでは,東京,大阪などとテレビ電話で結んでデモを行う予定である。

■IPv6でつながる機器を紹介するIPv6普及・推進協議会

 メーカーではないが,IPv6を推進する業界団体「IPv6普及・推進協議会」も出展する。参加企業の取り組みを紹介するとともに,IPv6対応機器のデモを行う。

 また,IPv6普及・推進協議会にはデジタルホームゾーン/Connected Home ShowcaseのIPv6ネットワーク構築には多大なご協力をいただいた。

■情報家電を受け入れる素地ができてきた

 デジタルホームゾーン/Connected Home Showcaseでは,上記の各社・団体のブースのほかに特設ステージでは,各社・団体によるプレゼンテーションも予定している。こうした住宅/住宅機器メーカーの取り組みを見ると,情報機器はそれを使いこなせる特別な人のものではなく,ごく一般の人も使える状態になってきたと実感していただけるのではないかと思う。

 みなさんもぜひ「デジタルホームゾーン/Connected Home Showcase」を訪れていただいて,コーナーの感想やご意見を聞かせていただきたい。

(和田 英一=IT Pro編集)