コンピュータ・ウイルスの届け出先機関である「情報処理振興事業協会セキュリティセンター(IPA/ISEC)」は9月5日,2002年8月中の届け出状況を公表した。8月中にウイルスを発見したという届け出は1756件,そのうち実際に被害に遭ったのは79件だった。特に届け出が多かったウイルスは「Klez」で1062件にのぼった。2002年4月以降,Klezは毎月1000件以上報告されており,IPA/ISECは改めて注意を呼びかけている。

 Klezウイルスはなかなか終息しない。その理由としてIPA/ISECは,(1)「送信者アドレスを詐称するために,本来の送信者(感染者)を特定できない」,(2)「Internet Explorer(IE)のセキュリティ・ホールを悪用する」,(3)「送信者アドレスが実在するアドレス,あるいは実在するようなアドレスである」――ことを挙げている(関連記事)。特に,(1)により,送信者へ感染の事実を伝えられないことが一番の問題である。そのため,同一のユーザーが延々とKlezを送りつづけている可能性がある。

 Klezに対する“特効薬”は存在しない。通常のウイルス対策を施す以外にない。具体的には,「ウイルス対策ソフトあるいはサービスの利用」,「IEをはじめとする,クライアント・ソフトウエアのセキュリティ・ホールの解消」,「怪しい添付ファイルの実行の禁止」――である。IPA/ISECは「ウイルス被害は他人事ではない」と警告し,上記対策の実施をうながしている。

 ただし,通常のウイルス対策を施していないユーザーがIPA/ISECのサイトを閲覧することはほとんどないだろう。IT Proのサイトについて同様であろう。そういったユーザーには,個人レベルで呼びかけていくほかない。ぜひ,身の回りのユーザーにウイルス対策の必要性を伝えていただきたい。

◎参考資料
コンピュータウイルスの届出状況について
8月のウイルス届出状況の詳細

(勝村 幸博=IT Pro)