マイクロソフトは，先週，開催されていたネットワーク関連の展示会「Networld+Interop 2002 Tokyo」において，コード名「Corona」として開発しているマルチメディア技術「Windows Media Technologies」の次期版を2002年末から順次，正式リリースすることを明らかにした。ビデオをデジタル化するエンコーダー，それを視聴するためのプレーヤーのリリースが先行し，配信サーバーの正式リリースは2003年初めになる。
CoronaはWindows Media Technologiesの次期バージョン。動画や音楽をデジタル化するためのエンコーダー「Windows Media Encoder」，多数の視聴者に配信するための配信サーバー「Windows Media Server」，視聴者が用いるプレーヤー「Windows Media Player」などからなる。
Coronaの新機能として，動画の再生が始まるまでのバッファリング時間を短くするための「ファストストリーム」機能，ストリーム制御プロトコル「RTSP」への対応，アプリケーション・プログラミング・インタフェースの拡充，IPv6への対応，番組の最初や合間に広告などを差し込む機能などがある。
ファストストリームは，ストリーム配信サーバーに接続してから1秒程度で再生を始める機能である。これまでは，再生が始まる前に，通信速度の変動によって再生が途切れてしまわないように，ある程度の容量のデータをWindows Media Player内でバッファリングしてから再生していた。このときの読み込み速度は，データがエンコードされた速度であったため，高速な回線を使っていても，再生を始めるまでに5秒～15秒程度の時間がかかっていた。ファストストリームでは，バッファリング時の読み込み速度を，エンコードされた速度以上にして，読み込み時間を短縮する。
具体的には，例えば，300kbps用にエンコードされた動画でも，回線速度に余裕があれば，300kbps以上の速度で読み込んで，いったん短時間でバッファを一杯にする。バッファが一杯になれば，読み込み速度を300kbpsに落として，その後の再生を続ける。その後，通信エラーなどでデータを受信できなくなりバッファが減ってきたら，再度，読み込み速度を300kbps以上にして，バッファを短時間で一杯にする。なお，ファストストリームを用いるために既存の動画ファイルを再変換するなどの作業は必要ない。
もう一つの特徴のストリーム制御プロトコルRTSPへの対応とは，ストリーム配信サーバーとWindows Media Playerの間で用いるプロトコルのことである。これまではストリーム制御プロトコルとしては，マイクロソフト独自方式が使われてきた。Coronaでは，これに加えて，RFC 2326で定められ，RealSystemやQuickTimeが採用しているRTSP（Real Time Streaming Protocol）も利用できるようになる。
RTSPへの対応は，プラグイン方式によって実現する。Coronaではプラグイン方式を採用し，必要な機能を追加で組み込めるようになったのである。これにともないCoronaのアプリケーション・プログラミング・インタフェースの数は飛躍的に増えた。様々な機能をユーザーが組み込めるようになったという。
また，CoronaではIPv6にも対応する。IPv6に対応するWindows .NET Server上でWindows Media Serverを動かし，IPv6で動画などのデータを送信して，それをやはりIPv6対応となるWindows XP SP1上でWinodws Media Playerにより再生することができる。
新版Windows Media Playerは2002年後半に予定されているWindows XPのService Pack1（SP1）には間に合わず，SP1搭載パソコンには従来のWindows Media Playerが組み込まれる。Windows Media PlayerおよびWindows Media Encoderの新版は11月下旬から12月上旬，Windows Media ServerはWindows 2000 Serverの後継OS，Windows .NET Serverのリリースと合わせて，2003年初めのリリースとなる。英語版をリリースしてから2週間以内に日本語版がリリースされる予定。
（和田 英一＝IT Pro編集）
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