コンピュータ・ウイルスの届け出先機関である,情報処理振興事業協会セキュリティセンター(IPA/ISEC)は7月5日,2002年6月中のウイルス届け出状況を公表した。IPA/ISECによると,ウイルスを発見したという届け出は2410件,そのうち実際に被害に遭ったのは187件だった。また,全届け出数の実に8割(1555件)がKlezウイルスだった。Klezの猛威はいまだに衰えていない。IPA/ISECでは,身の回りのユーザーにもウイルス対策の必要性を伝えるよう呼びかけている。

 同時にIPA/ISECは,2002年上半期(1月から6月まで)の届け出状況についても公表した。それによると,ウイルスを発見したという届け出は11569件で,過去最悪だった2001年の同時期に比べ,およそ1.2倍であるという。ただし,実際に被害に遭った割合(実害率)は,2000年および2001年がおよそ20%であったのに大して,2002年上半期はおよそ9%にとどまり,対策を施しているユーザーが多いことをうかがわせる。IPA/ISECでは,引き続き対策を施すよう呼びかけている。

 2002年4月以降,Klezウイルスの猛威は衰えない。前月2002年5月に引き続き,今月も全体の8割を占めている。Klezの特徴の一つが,送信者名(Fromヘッダー)を詐称することである。そのため,“本当の”送信者に対して,ウイルス・メールが送られてきていることを知らせられない。その結果,ウイルスに感染している本当の送信者は,Klezをまき散らし続けることになる。

 ただし,本当の送信者が受信者の知り合いである可能性はある。Klezは,アドレス帳やパソコン内のファイル(HTMLファイルやテキスト・ファイルなど)に記載されたメール・アドレスあてに,ウイルス・メールを送信するからだ。アドレス帳から送信先が選択された場合には,送信者が受信者の知り合いである可能性は高い。

 そのためIPA/ISECでは,メール交換をする知り合いにも,ウイルス対策を施すように勧めることを呼びかけている。メールを交換する相手が対策を施せば,自分にウイルスが送られてくる可能性を小さくすることができる。

 改めて言うまでもないが,ウイルス対策の基本は「メールの添付ファイルなどを安易に実行しない」,「データ・ファイルを絶えず更新するなどして,ウイルス対策ソフトを適切に使用する」,「Windows Updateなどを利用して,使用しているプログラムのセキュリティ・ホールをふさぐ」――ことである。

 2002年上半期の届け出状況の中では,特に「メールの添付ファイルには十分注意すること」と「Internet Explorer(IE)のセキュリティ・ホールをふさぐこと」を呼びかけている。というのも,メールで感染を広げるウイルスと,IEのセキュリティ・ホールを突いて勝手に発病するウイルスが増えているからだ。前者は全体の98.2%,後者は全体の74.3%に上っている。

 上半期中の発見届け出件数も多い。年間の届け出件数が24261件で過去最悪であった,2001年を上回るペースで報告されている。しかしながら,実害率はおよそ9%と低い。IPA/ISECによれば,ウイルス対策がある程度浸透してきているためだとしている。

 とはいうものの,ウイルスがまん延している状況には変わりはない。IPA/ISECに報告しないだけで,被害に遭っているユーザーは依然多いはずだ。発見件数の増大がそれを裏付けている。IPA/ISECが呼びかけているように,現在対策を施しているユーザーは,引き続き対策を施すとともに,対策していないユーザーにその必要性を呼びかけていただきたい。

◎参考資料
コンピュータウイルスの届出状況について[要旨]
6月のウイルス届出状況の詳細
2002年上半期ウイルス発見届出状況

(勝村 幸博=IT Pro)