マイクロソフトは6月13日,Internet Information Server 4.0/Services 5.0(IIS 4.0/5.0)のセキュリティ・ホールを公開した。ある特定のリクエストがIISサーバーに送信されると,サービスを停止させられたり,サーバー上で任意のプログラムを実行されたりする恐れがある。対策は,パッチの適用かHTR機能を無効にすること。

 今回のセキュリティ・ホールは,HTR機能を実現するISAPIエクステンションの不具合が原因である。このISAPIエクステンションが処理するような,不正なリクエストが送信されると,同エクステンションがバッファ・オーバーフローを引き起こす。

 なお,HTR機能とは,IISに初期に実装されたスクリプティング機能のこと。ASP(Active Server Pages)機能の登場により,現在はほとんど利用されていない。また,ISAPIエクステンションとは,ISAPI(Internet Services Application Programming Interface)と呼ばれるインタフェースを介して,IISに付加機能を提供するダイナミック・リンク・ライブラリ(.dll)のことである。

 対策は,既に公開されている日本語版用パッチを適用すること。パッチを適用できない場合には,HTR機能を無効にすることでも回避できる。HTR機能に関連するセキュリティ・ホールは複数見つかっているために,マイクロソフトは同機能を無効にすることを,「Internet Information Server 4 ベース ライン セキュリティ チェックリスト」「IIS 5.0 ベースライン セキュリティ チェックリスト」などで勧めている(無効にする方法はこれらのドキュメントに書かれている)。「IIS Lockdown ツール」を使っても無効になる。日ごろから対策を施していれば,HTR機能は無効にされているはずなので,今回のセキュリティ・ホールの影響を受けない。

 とはいえ,HTR機能を無効にしていても,念のためにパッチを適用しておきたい。無効にしていても,システム構成などを変更すると,勝手に元の状態に戻る場合があるからだ。

 マイクロソフトは深刻度を「中」としているものの,リモート・ユーザーから任意のプログラムを実行される恐れがある,深刻なセキュリティ・ホールである。実際,今回のセキュリティ・ホールを発見した米eEye Digital Securityでは,深刻度(Severity)を「高(High)」と設定し,できるだけ早くパッチを適用するよう勧めている。

 また,HTR機能が無効になっていることを改めて確認したい。HTR機能を使うことはまずないので,必ず無効にしておきたい。

 なお,マイクロソフトから最近公開されるパッチは,それまで公開されたパッチをすべて含んだ“累積パッチ”であるが,今回のパッチは異なる。上記のセキュリティ・ホールだけを修正するパッチであるので,注意しておきたい。

◎参考資料
MS02-028 に関する情報(要約情報,マイクロソフト)
Heap Overrun in HTR Chunked Encoding Could Enable Web Server Compromise (Q321599)(英語情報,米Microsoft)
Windows 2000 and NT4 IIS .HTR Remote Buffer Overflow(英語情報,米eEye Digital Security)
HTR のチャンクされたエンコードのヒープ オーバーランにより Web サーバーのセキュリティが侵害される (Q321599) (MS02-028)(マイクロソフト)

(勝村 幸博=IT Pro)