情報処理振興事業協会(IPA)セキュリティセンター[用語解説]は4月4日,2002年3月のコンピューター・ウイルス届け出状況を公開した。ウイルスの発見届け出は1460件で,そのうち実際に被害に遭ったのは153件。いずれも2002年2月(発見1439件,被害126件)と同程度である。同センターでは,届け出件数が急増している「Fbound」ウイルスを警告するとともに,「対策ソフトを過信することなく,添付ファイルは安易に実行しない」ことを改めて呼びかけている。

 Fboundウイルスが出現したのは3月中旬のこと(関連記事)。それにもかかわらず,3月中に212件の届け出があり,「Badtrans」ウイルスの448件,「Klez」ウイルスの224件に次いで多かった。

 届け出が多かった原因は,Fboundを添付したメールの件名が日本語であるためと考えられる。今までは,件名が日本語になるウイルス添付メールはほとんどなかった(関連記事)。そのため,添付ファイル「patch.exe」を実行してしまうユーザーが後を絶たなかったようだ。

 アンチウイルス・ベンダーの対応が遅れたことも,初期の感染拡大を“加速”させた。Fboundが国内で広まり始めた3月14日,Fboundに対応したウイルス定義ファイル(パターンファイル)が公開されるまでに時間がかかった。「怪しい添付ファイルだが,ウイルス対策ソフトにひっかからないので大丈夫だろう」――そう考えて実行してしまったユーザーは少なくないだろう。

 IPAセキュリティセンターでは,添付ファイルを安易に開かないよう改めて注意するとともに,「新種ウイルスについては,最新のウイルス定義ファイルでも検出できない場合がある」として,対策ソフトを過信しないよう呼びかけている。もちろん,ウイルス対策ソフトの利用は不可欠である。対策ソフトを適切に使用した上で,添付ファイルを安易に開かないよう心がける必要がある。

 Internet Explorer(IE)などのソフトウエアのセキュリティ・ホールをふさぐことも不可欠だ。IEのセキュリティ・ホールを悪用するBadtransやKlezの届け出も相変わらず多い。特にKlezについては,IPAセキュリティセンターが4月2日に改めて警告している関連記事)。

◎参考文献
ウイルス発見届出状況(3月分)
3月のウイルス届出状況の詳細
「W32/Klez」ウイルスの亜種に関する情報

(勝村 幸博=IT Pro編集)