コトヴェールは12月14日,漏えいする電磁波を低減して盗聴を防ぐディスプレイ・ケーブル(パソコンとディスプレイをつなぐケーブル)「TGC(Tapping Guard Cable)」を,近日中に発売することを明らかにした。ただし,コトヴェールは製造元および製品の問い合わせ先で,販売元はNTTアドバンステクノロジである。店頭で購入可能で,価格は9000円程度を予定している。

 「パソコン本体はシールドされているが,ディスプレイあるいはキーボードなどと本体をつなぐケーブルからは電磁波が漏えいしている。ケーブルが“アンテナ”になるのだ。この電磁波を受信すれば,画面に映し出されている情報や,キーボードに入力された情報を“盗聴”できてしまう」(コトヴェール 営業部次長 コンサルティング事業部次長 山田憲司氏)

 同氏によると,建物から100メートル離れた場所で,屋内のパソコン(正確にはケーブル)から漏えいする電磁波を受信できるという。このとき,同時に複数のパソコンが稼働していても,それぞれから漏えいする電磁波を正確に判別できるという。

 「漏えい電磁波の盗聴は,現実社会で既に起こっている」(山田氏)。同氏の言葉を裏付けるように,総務省は2000年11月の研究会で,漏えい電磁波対策の必要性を指摘。さらに,同省が掲げる「情報通信ネットワーク安全・信頼性基準」を2001年3月に改訂し,対策すべき脅威として,「電磁波による情報漏えい」を追加した。

 コトヴェールは,プリンタ・ケーブルやマウスおよびキーボード・ケーブル用の電磁波漏えい防止製品については,既に製造販売している(開発元は米TRW)。「マイクロディスク・フレックス・フィルタ」である。1枚の薄いフィルタである同製品をコネクタ部分に挿入することで,ケーブルからの電磁波漏えいを大幅に低減できる。価格は1枚2000円から2500円。同製品は2年ほど前から販売されており,国内では数千件の導入実績があるという。特に,官公庁や個人情報を多く取り扱っている企業などが導入しているという。

 ただし,ディスプレイ・ケーブル用のフィルタは販売していなかった。というのも,「ディスプレイの機種によっては,漏えいする電磁波だけではなく,必要なデータ信号も遮断してしまう場合があるからだ」(山田氏)。ディスプレイの機種を指定した,特注については対応していたが,市販はしていなかった。

 今回発売する「TGC」は,「マイクロディスク・フレックス・フィルタ」と,ケーブル自体を被覆する「NoiseBEAT](NTTアドバンステクノロジが開発)と呼ばれるテープを組み合わせることで,データ信号を邪魔することなく,漏えいを防ぐ。フィルタには遮へい効果が弱いものを使用し,データ信号を邪魔することを防ぐ。そして,フィルタだけでは不十分な漏えい防止を,NoiseBEATで補う。

(勝村 幸博=IT Pro編集)