アンチウイルス・ベンダー各社は12月5日,新種ウイルス「Goner(あるいはGONE)」を警告した。電子メールやICQ *1 のメッセージに添付して送られてくる「GONE.SCR」ファイルを実行すると,アドレス帳やICQのリストに登録されているすべてのユーザーにウイルス自身を送信する。併せて,ウイルス対策ソフトやパーソナル・ファイアウオールなどを削除する。

*1 インスタント・メッセージング・ソフトの一種。

各ベンダーは日本時間12月5日の早朝に対応

 各ベンダーのウイルス対策ソフトのデータ・ファイル *2 が対応したのは,日本時間では12月5日早朝である。そのため,早急に更新して,検出できるようにしておく必要がある。なお,添付ファイルを実行しない限り,被害を受けない。

*2 ウイルス対策ソフトが,ウイルス検出に使用するデータベース・ファイルのこと。「パターン・ファイル」,「ウイルス定義ファイル」,「DATファイル」などと,ベンダーによって名称が異なる。

 ワールドワイドで,日本ネットワークアソシエイツには500件以上,シマンテックには464件,トレンドマイクロには125件の感染報告が寄せられている。日本でも報告されているものの,それほど多くはないのが現状であるが,海外同様,国内での感染拡大が予想されるため,および,発病挙動が多彩かつ“凶悪”であるために,警告を発している。

多彩な発病挙動,ウイルス対策ソフトの削除も

 単独の実行形式ファイル「GONE.SCR」として送られてくる同ウイルスを実行してしまうと,(1)ウイルス自身をメールに添付して送信,(2)ICQを使って,ウイルス自身を送信,(3)特定のウイルス対策ソフトやパーソナル・ファイアウオールのプログラムを削除,(4)インターネット・リレー・チャット用ソフト「mIRC」の設定を変更して,ユーザーが参加したチャンネルへDoS攻撃,(5)コンピュータを起動するたびにウイルス・ファイルが実行されるように,レジストリを変更---といった発病挙動を示す。発見されたのが,米国時間12月4日であるため,アンチウイルス・ベンダー各社は,現在も詳細を解析中であるという。なお,「GONE.SCR」は“隠しファイル”属性に設定されているので,デフォルト設定ではWindows上に表示されない。

 (1)のメール送信については,Outlook をインストールしていない場合には発生しない。これは,ウイルスの送信にOutlookを使用するためである。GonerウイルスはMAPI(Message API)を通じて,Outlookにウイルス添付ファイルを送信するよう命令を送る。そして,送信したことを分からなくするために,送信後は「送信済みトレイ」から,それらに対応するメールを削除させる。

 (2)のICQによる送信については,リストに登録されているユーザーすべてに,Gonerのウイルス・ファイル「GONE.SCR」を送信する。シマンテックの情報によれば,ICQの通知機能をすべて無効にしてから,ウイルスを送信するという。そして,送信後には有効な状態に戻す。これにより,感染マシンのユーザーにばれることなく,ウイルスを送信できる。

 (3)のファイル削除は,OutlookやICQをインストールしていない環境でも起こる。主なウイルス対策ソフトや「ZoneAlarm」などのセキュリティ・ソフトの実行形式ファイルを探し出して削除する。ソフトが実行されている場合には,そのプロセスも終了させる。また,ファイルが使用中で削除できないような場合には,マシンが次回起動された際にそれらを削除するようなファイル「Wininit.ini」を作成する。

 なお,削除されるファイルの具体名については,アンチウイルス・ベンダー各社が公開している情報を参照してほしい。

 (4)のように,mIRC も悪用する。同ソフトの設定ファイルを改変することで,感染マシンのユーザーがIRCチャンネルに接続した際に,そのチャンネルと参加中の全ユーザーに対して大量のデータを送信するようにする。

 また,(5)のために,ウイルスに感染した場合には,ウイルス・ファイルを削除するだけではなく,レジストリを元に戻す必要がある。具体的な復元方法については,アンチウイルス・ベンダー各社の情報を参考にしてほしい。

セキュリティ・ホールを突く変種出現の恐れあり

 「Aliz」や「Badtrans.B」ウイルスとは異なり,添付ファイルを実行しなければ発病することはない。ただし,Badtransの場合と同様に,Internet Explorerのセキュリティ・ホールを悪用するように改変した変種が出現する可能性はある。油断は禁物だ。

 なお,アンチウイルス・ベンダー各社に話を聞いたところ,“目新しい”感染メカニズムを持たない今回のウイルスが,なぜこれほど感染を広げているのかについては,不明であるという。

◎参考資料
W32.Goner.A@mm(シマンテック)
W32/Goner@MM(日本ネットワークアソシエイツ)
WORM_GONE.A(トレンドマイクロ)
CERT Incident Note IN-2001-15:W32/Goner Worm(米CERT/CC)

(勝村 幸博=IT Pro編集)