先週の水曜日夕方から金曜日夕方にかけて,ソフトバンク子会社のBBテクノロジーとヤフーが発表したADSLサービスについての緊急アンケートをIT Proサイトで実施した(【緊急アンケート】ヤフーのADSLサービスについてご意見を!)。1000人を超える読者の皆様からのご回答があった。たくさんのご意見を本当にありがとうございました。

下り2Mビット/秒以上なら過半数が納得

 アンケートに対して,74%を超える方々がヤフーのADSLサービスを「使いたい」と回答し(表1),8割近い方々が「料金を最も評価する」と回答している(表2)。速度についての期待では,2Mビット/秒以上出るならば過半数の方々が納得するということが分かった(表3)。

表1 「Q-1.あなたは,ヤフーのADSLサービスを使いたいと思いますか?」

使いたい 74.2%
使いたいとは思わない 3.6%
まだ分からない 22.2%

表2 「Q-2.同サービスで最も評価できると思うことは何ですか?」

料金 79.8%
速度 13.5%
全国展開 5.4%
その他 1.3%

表3 「Q-4.どの程度の速度(下り方向)が得られれば納得できますか?」

6Mビット/秒以上 22.1%
4Mビット/秒以上 25.8%
2Mビット/秒以上 26.1%
1Mビット/秒以上 22.2%
数百kビット/秒以上 3.8%

 Q-3で質問した評価できない点については,次のような指摘が代表的なものであった。

(1)採算性が不透明であり,事業の継続性に疑問がある
(2)速度や品質についての裏付けと実績がない
(3)計画通りの展開ができるとは思えない
(4)公開されている情報が少なすぎる

 これらの指摘は,Q-1の回答内容にはかかわらず,多くの方々から寄せられている。「使いたい」とはしながらも,サービス内容や事業として成立するかどうかについては,全幅の信頼は置けない,という内容である。

 既存サービスの約半額という料金だけに,歓迎しつつもにわかには信じ難いというのが正直なところであるようだ。特に,通信事業に近いポジションにいるであろう方からは,「その料金でできるわけがない」という指摘もいくつかあった。東京めたりっく通信の経営難や三井物産などの撤退,米国でのADSL事業者の苦戦などを背景に,サービス展開が厳しくなったら撤退したり値上げしたりするのではないか,という事業そのものに対する懸念も多く寄せられた。また,北米方式でどの程度のユーザーをカバーできるのか,バックボーンは本当に十分に太くて高信頼なのか,あるいはIPアドレスはグローバル・アドレスが利用できるのか,といった技術的な仕様への疑問も多数寄せられた。電話局ごとの展開スケジュールも,詳細はまだ見えていない。

 なお,IPアドレスに関しては,IT Proが金曜日夕方の段階でヤフーに確認したところ,「グローバル・アドレスを1つ使えるようにするが,固定アドレスかどうかは検討中」という回答が得られた。北米方式に関しては,関連記事(月額2467円でADSLインターネット,ヤフーとソフトバンク子会社が8月開始)および記事中の「IT Pro注」を参照されたい。

北米方式採用は42%が「知らない」

 Q-7で自由記入でいただいた意見は,Q-3と同様にQ-1の回答内容にかかわらず賛否両論であった。Q-3と重複する内容もあり,Q-3をブレイクダウンしたような内容にもなっている。代表的な意見を紹介する。

(1)料金,速度とも,素晴らしい。横並びになりつつあった国内のADSLサービスに刺激を与えることで,全体の料金低下に結びつくだろう。事業展開と合わせて考えると,NTTの真の対抗勢力になる可能性を秘めている。その半面で,淘汰が進みすぎる可能性もある。

(2)インフラ事業は継続性が大事であるが,採算性が不透明であるため継続性の判断ができない。これまで,ソフトバンク・グループが打ち出した事業には,スピードネットのように失敗したものもある。今回のADSLサービスについても,そうなる懸念はぬぐえない。

(3)ヤフーにはプロバイダ事業の実績が少ない。今のところ,プロバイダをヤフーに固定されるようになるのは,サービスとして評価しにくい点。ポータル・サービスやコンテンツ・ビジネスと一体化している点で,事業としての収益性がいっそう見えにくくなっている。

(4)ADSL事業者に対するこれまでのNTTの対応を見ている限り,計画通りの展開は不可能ではないか。工事などはNTTのスケジュールで進まざるを得ない部分が多い。NTTの“妨害”がないことを望む。

(5)北米方式でどの程度の速度や品質が得られるのか不安がある。“最大”と断ってはいるものの,8Mビット/秒は誇大な表現ではないか。ISDNとの干渉に関しても触れていない。

 今回のアンケートの回答で特に目立ったのは,1999年夏に発表したスピードネットの失敗を繰り返すのではないか,という指摘であった。ユーザーには,「ソフトバンク/スピードネット」という過去が強烈な負の印象となって残っているようだ。ADSLサービスが,上位レイヤのサービスではなく,インフラ・サービスであることも,事業採算性と継続性をより強く問う姿勢につながっている。

 また,北米方式については,局からの距離やISDNの干渉による実効速度などを危惧する声が多かった。その一方で,国内仕様にこだわらなかったことを英断とする回答も見受けられた。ただし,今回発表のサービスが北米方式をベースにしていることについて,回答者の約42%が「知らない」としており,最大8Mビット/秒という数字だけで判断するようなユーザーも少なくないのではないかという懸念は残った。ADSLの実効速度が電話局からの距離に依存する事に関しては,回答者の約92%が認識しているのとは好対照である。

 さらに,実効速度はバックボーンに大きく依存する。運良く電話局の近くに住んでいて,ADSLの部分では数Mビット/秒が得られたとしても,多くのユーザーで共有するバックボーンの手当てが十分になければ,実効速度は期待できない。このあたりの具体的な説明を求める声もあった。

 今回は,表4にも見られるように,実際のユーザー数から考えるとADSLユーザーの比率がきわめて多い母集団となっている。しかも,ITのプロフェッショナルが中心である。これが一般のユーザーになった場合,北米方式かどうかということをどれだけ意識するものだろうか。事業者側には,よりいっそうの説明が求められるだろう。

表4 「Q-99.自宅でどんなアクセス回線を主に利用していますか?」

ISDN 26.1%
ADSL 28.1%
CATV 11.6%
FTTH 0.5%
アナログ 31.3%
無線・モバイル 2.4%

 今回発表のサービスについては,批判的あるいは懐疑的な意見も多数あるとはいえ,概ね好意的に受けとめられている。多くの方々がBBテクノロジーとヤフーに対して,「今回発表の計画が,単なる大風呂敷で終わらず,継続的に提供されるならば素晴らしい」と評価している。ただし,「ユーザーを納得させるにはもっと詳しい説明が必要」という点は,両社にもっと意識して欲しい点である。

 「独占的な地位を使って割高な料金を要求するよりも,低料金を武器に独占を狙うのなら,ユーザーとしては歓迎する」というコメントは,ユーザーの正直な気持ちではないだろうか。

 なお,自由記入でのコメントは,別記事(【緊急アンケート集計続報】 ヤフーのADSLについての皆さんのコメント)でご覧いただけます。

(田邊 俊雅=IT Pro副編集長)