NTTは4月17日,NTT情報流通プラットフォーム研究所が開発した4種類の暗号技術に関する基本特許を無償提供することを発表した。対象となるのは,共通カギ暗号の「Camellia」,公開カギ暗号の「EPOC」ならびに「PSEC」,電子署名「ESIGN」。Camelliaは三菱電機との共同開発だが,今回の無償化については三菱も了解済みであるという。

 無償化の対象となる暗号のアルゴリズムや仕様は既に同社のWebサイトや学会論文などで公開されているが,実装して使用するには特許料を支払う必要があった。今回の発表により,無償で商用利用できるようになる。ただし,同社が特許を持つ実装技術(ノウハウ)については対象外である。また,アルゴリズムを改変することも許さない。詳細な利用規則については近日中に同社Webページで公開する予定なので,特に商用目的の場合にはその内容を読んでから利用してほしいという。

 今回の無償化は「同社の暗号技術の普及が目的。広く使ってもらうためには無償でなくてはならない。特に公開カギ暗号については,無償の『AES』と『RSA』に対抗するためにも特許料を無償にする必要がある」(NTT情報流通プラットフォーム研究所 情報セキュリティプロジェクト セキュリティ基盤研究グループ 研究主任 神田 雅透氏)。2000年10月に最終候補が「Rijndael」に決まった次期米国政府標準暗号「AES」は元々使用権料を要求しないこと(ロイヤリティ・フリー)が条件である。また,代表的な公開カギ暗号である「RSA」については2000年9月に特許が切れている(実際には特許切れの2週間前に同社が特許行使権を放棄)。

 無償化のもう一つの目的は,暗号分野におけるNTTの知名度を上げることだという。「特許収入よりも,こちらのほうが重要」(神田氏)。

 今後同社は,無償化した暗号アルゴリズムのサンプル・プログラムを公開する予定である。ただし,あくまでもサンプルなので,計算を高速化するノウハウなどは盛り込まない。また,サンプル・プログラムをそのまま商用利用することも許可しない予定であるという。

(勝村 幸博=IT Pro編集)

[NTTのプレス・リリース]

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