米Intelの日本法人インテルが,64ビット・アーキテクチャ(IA-64)の「Itaniumプロセサ」に対応するハードおよびソフトの開発状況を3月29日に明らかにした。これまで何度も出荷延期を繰り返したItanium(開発コード名「Merced」)だが,いよいよ「2001年6月30日までには必ずItaniumを載せたサーバーやワークステーションが登場する」(eマーケティング本部 平野浩介氏)段階にこぎ着けた。

 Itaniumの最初のチップ(いわゆるファースト・シリコン)が完成したのは1999年8月のこと。その直後の8月末に開催された同社の開発者会議IDF(Intel Developer Forum)で,WindowsとLinuxの立ち上げのデモを披露したものの,その歩み順調とは言えなかった(下掲の関連記事参照)。

 たとえばItaniumのマーケティング責任者は昨年9月の時点で,「プラットフォーム・リリース(Platform Release)と呼ぶ一般に利用可能になる段階は,2001年第1四半期とみている」(Intel社Microprocessor Products Groupのマーケティング・ディレクタRonald E. Curry氏)と語っていたが,この見通しも外れた。結局,Itaniumのプラットフォーム・リリースは1四半期遅れてしまった。

 ただし,「ソフトウエア開発などに使うパイロット・マシンは,2000年末の時点でIntel社からだけでも7000台出荷している。他のコンピュータ・ベンダーの台数を加えれば,1万台弱は出ているはずだ。ファースト・シリコンから18カ月もたっているので,Itaniumのハードウエア的なバグはほぼなくなりつつある。ただOSやアプリケーション・ソフトウエアについて,開発の見通しが甘かったのは事実」(平野氏)。

 OSに関しては6月の時点で,HP-UX,Linux,AIXが揃う予定という。64ビット版Windows XPに関してはクライアント版は2001年後半に提供されるが,サーバー版はしばらく特定ユーザーに向けた限定出荷になる見込み。

 「ミドルウエアを含め,ユーザーが所望のソフトを自由に組み合わせてItanium機を使える環境ができるのは,2003年から2004年にかけてだろう。しばらくは,コンピュータ・ベンダーなどが検証して提供する環境を使うことになる」(平野氏)。

来年には次世代IA-64のMcKinleyがもう登場

 この6月にようやく登場する初代Itaniumだが,実は後継チップ「McKinley(開発コード名)」がすぐに後ろに控えている。

 McKinleyは内蔵キャッシュやシステム・バスに改良を加えたプロセサ。7段のパイプライン構成を採り,3階層のキャッシュもつ。0.18μmルールの製造技術を使い,6層のメタル(アルミニウム)配線で2億1400万のトランジスタを集積する。IA-64プロセサを搭載した量産システムの向けプロセサという位置付けである。業界では「IA-64の本命」との期待する向きが多い。

 この点はインテルも暗に認めており,記者会見でも米国の調査会社IDCのデータを引用しながら「Itaniumファミリのプロセサを搭載したサーバー市場は2002年に立ち上がり,2003年以降にぐんと拡大する」との見方を示すとともに,「McKinleyはフロントエンドのサーバーにも使われる。WWWデータのキャッシングやセキュリティ関連の処理に向けるMcKinley搭載の薄型サーバーが2001年に出てくるだろう」(平野氏)との見通しも明らかにした。

 こうなると,「6月に登場するItanium搭載機は誰が購入するのか?」という疑問が沸く。しかも米国経済の失速もあり,IT投資には厳しい目が向けられている。

 この点に関し平野氏は,「まずは科学技術計算用途でのニーズが強い。企業の研究所や大学からの引き合いが多い。ワークステーションがまず市場を引っ張ると考えている」と語る。「業種では製造業が中心」(インテルe-マーケティング本部 本部長の佐藤宣行氏)という。

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(横田 英史=IT Pro編集長)