ウィルス対策製品などのコンテンツ・セキュリティ分野では,確固たる地位を獲得している米Symantec。次に同社が狙うのは,包括的なソリューションを提供できるセキュリティ・ベンダーへの脱皮である。その一環として,2000年12月に米Axent Technologiesを買収して,製品ラインアップを大幅に拡大した。しかし,製品だけでは,競合ベンダーには勝てない。同社が計画しているのは,サービス事業の充実である。その柱が,「セキュリティのアウトソーシング・サービス」と「セキュリティのプロを養成する教育プログラム」だ。販売パートナへの説明のために,1月25,26日に来日していた,ワールドワイド・セールス部門の副社長 Dieter Giesbrecht氏(写真)に,今後の戦略などについて話を聞いた。

写真●米Symantec マーケティング&サービス, ワールドワイド・セールス部門 副社長 Dieter Giesbrecht氏

買収で製品ラインアップを強化

---なぜAxent Technologiesを買収したのか。

 今まで,コンテンツ・セキュリティやウイルス対策の分野には強かったが,それだけでは,セキュリティのリーディング・カンパニになるには不十分だ。もっと広範囲の製品が必要だった。

 Axent Technologiesを選んだ理由は,それぞれの製品が重複しないからだ。お互いの製品を組み合わせれば,ユーザーに完全なセキュリティ・ソリューションを提供できる。買収により,侵入検知システムやファイアウオールなどをラインアップに加えることができた。また,ワールドワイドで従業員は3500名以上,売上高も10億ドル規模となり,世界最大のセキュリティ・ベンダーとなった。

 統合は順調に進んでおり,現在は「セキュリティ製品の集中管理」および「新しい脅威に対する迅速な対応」を可能にする製品やシステムの開発を進めている。

 まず,複数のセキュリティ製品を共通のコンソールから管理できて,共通のレポートを出力するようなツールを開発している。

 さらに,新しいぜい弱性が見つかったときに,その対応策をすぐにユーザーに提供するシステムを開発中だ。既にSymantecでは,ウイルスに関しては,世界4カ所にリサーチ・センターを設け,24時間体制のサポートを提供している。新しいウイルスを発見したら,すぐに対策ファイルを作成し,ユーザーに提供する。同様に,侵入検知に対しても同レベルのサービスを提供する。すなわち,セキュリティ・ホールなどの新しい脅威を発見したら,その情報を,ユーザーの侵入検知システムに提供できるような仕組みを確立する。

「オペレーション・センター」からユーザーのシステムを監視

---今後の戦略について聞かせて欲しい。

 セキュリティ製品のラインアップはそろえたが,それだけでは十分ではない。サービスが不可欠だ。今後はサービス事業を充実させる。例えば,セキュリティ管理のアウトソーシング・サービスが挙げられる。ユーザーのシステムを絶えず監視して,セキュリティ・インシデントが発生したら,すぐに対応するようなサービスである。セキュリティのために人員を割けない企業,特に中小企業にはニーズがあるはずだ。

 既にSymantecでは,2000年始めにAxcent Technologiesが設立した「セキュリティ・オペレーション・センター」を使って,サービスを提供している。現在,センターは米国のテキサス州と英国ロンドン近郊の2カ所にある。そこから,2社の大企業と,10社を超える中小企業のネットワークをモニタリングしている。

 インターネットを経由するので,両センターから世界中をカバーできるが,アジア,特に日本向けには,同サービスをどのように提供するのか検討中である。詳細についてはまだ言えないが,2~3カ月以内には,日本市場における計画を明らかにする予定だ。

セキュリティ・スペシャリストを養成

 さらに,コンサルティングにも力を入れる。セキュリティ・ポリシーの作成やセキュリティ・インフラの構築,運用をサポートする。これらはSymantecだけでは無理なので,パートナ企業の協力を仰ぐ。

 しかし,世界的に,セキュリティ・スペシャリストの数が足りない。Symantecでは,ワールドワイドで70名のスペシャリストを擁しているが,それでも十分ではない。そこで,スペシャリストの数を増やすべく,パートナ企業向けに,教育プログラムを提供する。Axent TechnologiesとSymantecが以前から提供していたトレーニングを組み合わせたプログラムで,修了すれば,認定証を発行する。

 トレーニングの教材は,日本語およびヨーロッパの主な言語には翻訳している。日本での教育プログラムは,2001年3月の終わりに,教材とインフラを用意できるので,それ以降に提供する予定である。なお,パートナ企業向けだけではなく,ユーザー企業向けにも教育プログラムを提供する。