12月11日に都内で開催した「第3回 J2EEカンファレンス」(日経BP Javaプロジェクト主催)は、SunとIBMの2社のJSF(JavaServer Faces)対応開発ツールが競い合う場となりました。奇しくも「世界初」のタイミングで--。

 JSFは、期待の「大物新人」といえる技術です。Webアプリケーションの生産性を高め、開発者にとっての敷居を下げる役割が期待されています。ServletとJSP(JavaServerPages)の上位に位置するAPIで、これら従来の技術よりも短く簡単な記述で開発でき、しかもビジュアル開発ツールとの親和性が良いことが売り物です。

 そのJSFの製品化ですが、まずSunのツールが登場しています。

 2003年6月開催のJavaOneで、SunはJSF対応開発ツール「Project RAVE」(コード名)を披露しました。JSF対応ツールでJava開発者層を「1000万人に」拡大する、という力強いコンセプトとともに発表したのです。

 そして、先の12月3日に、独ベルリンで開催されたイベントでSunNetwork 2003で、「Project RAVE」はJSF対応の開発ツール「Java Studio Creator」という製品名となり、プレビュー版が発表されました。

 12月11日のイベント「J2EEカンファレンス」では、サンマイクロシステムズによるセッションの中でこのデモンストレーションを見せています。実際にプレビュー版が届いたのはこのイベントの直前だったらしく、まさに日本初公開の場となりました。

 次に、IBMのツールが登場しました。

 日本IBMは、この5月に都内で開催したイベントdeveloperWorks Liveの中でJSF対応ツールのプレビュー版を見せています。

 そして12月9日、都内で開催されたプレス・セミナーの場で、IBM WebSphere Studio V5.1.1が発表されました。これは従来製品のバージョンアップ版ですが、目玉となる機能がJSF対応の開発機能です(関連記事あり)。

 今の時点では、Sunの「Java Studio Creator」と、IBMの「WebSphere Studio V5.1.1」とでは、まだ詳細な機能比較ができる段階にありません。ただ機能以外の面について、分かったことを書いてみましょう。

●Sunの「Java Studio Creator」(コード名「Project RAVE」)
◎従来製品とは別系統の新製品。- 現状は、ごく限定されたユーザー向けのテクノロジー・プレビュー版。入手希望者はWebから申し込むが、断られる場合も多い。
http://wwws.sun.com/software/products/jscreator/index.html
◎一般向けのEA(アーリー・アクセス)版は、2004年3月頃に登場する見込み。
◎製品版は、2004年の夏を予定。価格は未定だが、Sunは「安くしたい」とコメント。
◎動作させるPCのスペックは、Pentium4 1GHz、メモリー512Mバイト以上。ディスク・イメージは約130Mバイト。
●IBMの「WebSphere Studio V5.1.1」
◎ 従来のWebSphere Studioのバージョンアップ版。
◎ 価格は14万3000円から。販売中。ただし機能はベータ版(JSFの正式仕様が未確定のため)。最近、トライアル版がダウンロード可能になった。
http://www-106.ibm.com/developerworks/websphere/downloads/WSsupport.html
◎動作させるPCのスペックは、Pentium4 1GHz以上、メモリー512Mバイト以上。ディスク・イメージは1Gバイト程度。

 こう並べてみるだけでも、二つの製品はかなり違います。新製品として登場する「Java Studio Creator」と、従来製品のバージョンアップ版である「WebSphere Studio V5.1.1」は、ターゲットとする層も、使い勝手も、価格も違うものになるでしょう。

 イベントの場で出た質問には、「Eclipseの上でオープンソースになることはないのか?」、というものもありました。「将来的にコモディティ化すれば・・当面は、先進的な機能でもあり有償の製品として売っていくことになる」というのが両社の答でした。

 JSFは、実はまだ標準化プロセスの途中にある技術です。正式仕様になる前にプレビュー版が出てきたことも興味深いことですが、イベントの場での関心が強かったことも印象的でした。

 やはり、新技術はエンジニアの心を躍らせるものがあります。「久しぶりにワクワクした」とコメントしてくれた開発者もいました。

 JSFに関する評価や議論は、これから広がっていくことでしょう。

星 暁雄=日経BP Javaプロジェクト

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