ここに一つの数字があります。

 コンポーネントの再利用率27%、という数字です。

 これは、イーシー・ワンでコンポーネント指向の開発プロセス整備を推進している佐藤純一氏が、筆者に教えてくれた数字です。同社が手がけたある企業システムでのコンポーネント再利用の比率を測定したものです。

 ある開発プロジェクトから成果物として出てきたソースコードを解析ツールで分析し、メソッド数、パッケージ数、クラス数などに注目して調べてみた結果、「再利用率27%」という数字を得たということです。ここで既存のコンポーネントの内容は、フレームワークなども含んでいます。

 現実のシステム開発で、1/4以上の部分が、既存のコンポーネントの組み合わせによって構成できている訳です。

 そして、佐藤氏によれば、再利用率は高ければ高いほどいい、といった単純なものではないそうです。コンポーネント再利用率があまり高くなりすぎると、かえって工数は増えます。再利用のための『糊』の部分が増えてくるからです。

 経験則や、シミュレーションから導いた最適な再利用率は、「50%ぐらいではないか」、そう佐藤氏は語ってくれました。

 これらの数字は、コンポーネント再利用という分野でのリアリティを示しています。コンポーネント再利用による開発生産性の向上には上限があります。「作らずに済ませる」にはいきません。しかし、現実のシステム構築技術とは、そのようなものです。100%ということは、どんな分野でもあり得ません。そして最大50%の生産性向上を期待できる技術は、十分に注目に値します。

 現実の構築事例での再利用率が27%、「理論値」は約50%--このような数字を見ることで、「再利用」に関する現実的なイメージが持てるように思います。

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 イーシー・ワンの佐藤純一氏には、きたる12月11日の「第3回 J2EEカンファレンス(http://coin.nikkeibp.co.jp/coin/J2EE1211/ )」で、コンポーネント指向開発のための開発プロセスを中心とした講演をお願いしています。コンポーネント開発に関する現実的な取り組みを確認したい方は、ぜひこのセッションを聴講されることをお勧めします。

 また、12月16日に同社が開催する「cBank Forum2003(http://www.opencbank.net/ )」では、コンポーネント指向開発がユーザー企業のITガナバンスの確立に大いに影響する、という問題意識から、各種セッションが繰り広げられる予定です。