2016年9月16日~30日(米国時間)に米アトランタで、米Microsoftが年次技術カンファレンス「Microsoft Ignite 2016」を開催した。サティア・ナデラCEO(最高経営責任者)が基調講演で力説したのは、人工知能(AI)の威力だった(写真)。

写真 人工知能の威力をアピールする、Microsoftのサトヤ・ナデラCEO
写真 人工知能の威力をアピールする、Microsoftのサトヤ・ナデラCEO
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 具体例として、パーソナルアシスタントサービスのCortanaが、ユーザー個人の情報や置かれている状況を理解したうえで、ユーザー宛に届いたメールの文面からやるべきことを抽出して報告したり、健康管理サービスのMicrosoft Healthと連動して、毎週することになっている運動をさぼると注意を促したりする機能を紹介した。

 Microsoftは、このようなユーザー一人ひとりの情報と状況を理解してアクションを起こす仕組みを、Azureに限らず、グループウエアのSaaS(Software as a Service)「Office 365」や、ERPとCRMのSaaS「Dynamics 365」などのクラウドサービスにも実装し始めている。

 基調講演ではその例として、メールボックスで、ユーザー一人ひとりにとって注目すべきメールだけを抽出する「Focused Inbox」や、英語とドイツ語のように言葉の異なるユーザー同士の口頭での会話をリアルタイムに翻訳する「Skype Translator」などを紹介した。

人工知能を自社アプリに取り込む

 AIを利用したこのような機能は、Azureのサービスを使い、ユーザー独自のアプリケーションに組み込める。例えば機械学習やビッグデータ処理、ストリーミング処理などの統合サービスCortana Analytics Suiteが備える「Bot Framework」を使う方法がある。このフレームワークによって実現するボットが、ユーザー一人ひとりの情報と状況を理解し、様々な情報を提供したり、タイミングを見計らって他のユーザーに連絡を取らせたりするという。

 Microsoftは、AIサービスの基盤強化にも乗り出す。既にGPU(Graphics Processing Unit)の導入により処理性能を高めていたが、IgniteではFPGA(Field Programmable Gate Array)を使う計画を発表した。

 FPGAは特定の処理を行う専用回路をプログラムできるハードウエア。CPU、GPUに比べ圧倒的に高速に処理できる。デモでは、Wikipediaの英文記事520万件を0.1秒でスペイン語に翻訳した。

 このほかMicrosoftはIgniteで、Azureの新サービスやアップデートを多数発表した。以降で、ネットワーク、仮想マシン、モニタリングに分けて、主要なものを紹介する。