2007年11月、米Microsoftのスティーブ・バルマーCEO(当時)は日本で開催したパートナー向けカンファレンスでこんなことを言った。「挑発的な意見かもしれないが、10年後に、自社で独自に管理するサーバーで、データを保持したりトランザクションを実行したりする企業は無くなるだろう」。

 あれから約10年、自社管理のサーバーが無くなったわけではないが、社内システムをクラウドに移す企業が増え、スタートアップ企業ではサーバーを持たないケースも珍しくなくなった。

 こうした動きを支えるのが、Microsoft Azureをはじめとするパブリッククラウドサービスだ。もともとAzureはMicrosoft .NETを提供するPaaS(Platform as a Service)としてスタートし、ユーザーニーズに応えてIaaS(Infrastructure as a Service)を追加。Microsoftは現在、Office 365などのSaaS(Software as a Service)も提供する総合クラウドベンダーとなっている。

 Microsoftのクラウドサービスのうち、業務システムを構築するうえで基本となるのはIaaSだ。そこで本連載では、業務システムを担当するエンジニア向けに、Azureのコア知識として、仮想マシン、ストレージ、ネットワークなどのIaaSの基本を解説する。最終的に、負荷分散した仮想マシンのアーキテクチャーや運用に必要な知識を身に付ける。

仮想マシン:物理マシンの割り当て解除まで課金

 AzureのIaaSでは、主に「仮想マシン」「ストレージ」「ネットワーク」という三つのコンポーネントを組み合わせて利用する。

 具体的な構成方法は、次回以降で解説する。今回は概念や課金について紹介する。

 まずAzure仮想マシンについては、起動中の仮想マシンインスタンスは、特定の物理マシンに割り当てられて起動し、課金が開始する。課金単位は1分だ。

 仮想マシンの作成が始まってから完全に削除されるまでのライフサイクルは、以下の通りである(図1)。

図1 仮想マシンのライフサイクル
図1 仮想マシンのライフサイクル
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  1. 仮想マシン作成開始
  2. 物理マシン割り当て
  3. 仮想マシン起動
  4. 仮想マシン停止
  5. 物理マシン割り当て解除

 このうち、物理マシンが割り当てられている2から4の期間が課金対象となる。

 注意したいのは、仮想マシンを停止させれば課金も止まるとは限らないことだ。仮想マシンにログオンしてシャットダウンすると、上記「4. 仮想マシン停止」の状態となる(画面1)。この状態では、物理マシンの割り当てが解除されておらず、課金が継続される。

画面1 仮想マシンの状態
画面1 仮想マシンの状態
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 課金を停止させるには、物理マシンの割り当てを解除する必要がある。それには、仮想マシン実行中にAzureポータルから停止させる。すると、正常なシャットダウンに続いて物理マシンの割り当て解除が行われる。

 Azure仮想マシンは基本的にDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)クライアントとして構成される。仮想マシンのNIC(Network Interface Card)には、動的なプライベートIPアドレスが割り当てられる。ただし、固定のIPアドレスを使い続けるように指定することが可能だ。