「AzureのPaaSを活用することで、オンプレミス(自社所有)の標準的な工期に比べて2~3割早く新サービスを開発できた。基盤部分の開発コストは少なく見積もっても半額で済んだ」――。セブン銀行の平鹿一久 システム部ITプラットフォーム室 次長は、スモールスタート基盤開発プロジェクトにおけるAzure活用をこう振り返る。

 セブン銀行はAzure上にPaaSを中心に構成したサービス開発基盤を構築。同基盤を使い、スマートフォンアプリによる海外送金機能や、リアルタイム振り込み機能を短期開発した。同基盤や各機能の開発は、電通国際情報サービス(ISID)が担った。

 同基盤はISIDが運用するプライベートクラウド「CLOUDiS」上に構築済みのインターネットバンキングシステムと、外部の提携先銀行やFinTech関連企業のサービスをAPI連携するものだ(図1)。

図1 Azure上にスモールスタート開発基盤を構築
図1 Azure上にスモールスタート開発基盤を構築
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 活用したAzureのPaaSはアプリケーション実行基盤の「Azure App Service Web Apps」、API作成、管理サービスの「Azure API Management」、モバイルプッシュ通知サービスの「Azure Notification Hubs」である。

 2017年8月にはフィリピン最大手銀行のBDO Unibankと連携し、スマートフォンアプリからフィリピンへ海外送金するサービスを提供開始した。

 2017年11月には、FinTech関連企業のドレミングが提供する勤怠・給与計算サービス「Dreming」と連携し、Dremingからセブン銀行の企業口座にリアルタイムで給与を振り込む機能を提供済みだ。

 海外送金とリアルタイム振り込み機能のどちらも、「実質の開発期間は約8カ月」と平鹿次長は語る。

狙いは新サービスの短期開発

 セブン銀行がAzure上に開発基盤を構築した狙いは、新サービスの短期開発だ。平鹿次長は「日頃から開発スピードの向上が必要と感じていた」と話す。

 新たな収益源となる新規サービスを早期に実現するため、社内全体で取り組んでいたのがFinTech関連企業などとの提携によるオープンイノベーションだ。

 システム部としても、スモールスタートを推進する動きがあった。「初期投資を抑えて小規模で開発を始めることで、リリースまでの期間を短縮できるインフラ作りを模索していた」(平鹿次長)。

 2016年2月には、スモールスタートを実現可能な基盤の検討を開始した(図2)。

図2 Azure利用の主な経緯
図2 Azure利用の主な経緯
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 選択肢となったのがパブリッククラウドサービスだ。「小さく始めて、後から拡張できるという観点から、パブリッククラウドが最適と判断した」(平鹿次長)。

 海外大手ベンダーを含む、複数のクラウド事業者にヒアリングを実施。「いくつかのサービスは実際に触ってみた」(平鹿次長)という。