ヤンマーはIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)を使った次世代の農業を実証するため、2017年10月からテストベッドのビニールハウスで農業IoTシステムを運用している。

 システムのインフラは、AWSのサービスで実現した。IoT基盤「AWS IoT」や、IoT機器でコードを実行する「AWS Greengrass」などを使った先駆的なシステムだ(図1)。

図1 IoTやAIを駆使した次世代農業を実証
図1 IoTやAIを駆使した次世代農業を実証
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 テストベッドでは、トマトを水耕栽培している。ハウス内には約30個のセンサーがあり、温度、湿度、CO2濃度、照度を10分に1回AWSに送信する。ハウス内のIoTゲートウエイとAWS間のデータ送受信には、AWS IoTを活用する。

 Greengrassは、センサーデータを基に独自の計算式で必要な溶液の成分を算出するコードを実行。AWSを経由せずに、ハウス内の水耕栽培システムに養液投与の制御信号を送る。

狙いは農家の負担軽減

 ヤンマー 中央研究所 基盤技術研究部 知能情報グループ グループリーダーの大林正之氏は、システム構築の狙いをこう語る。「IoTやAIにより遠隔制御や自動化を実現すれば、農作業の負担を減らせる。農家が抱える高齢化、後継者不足、収益改善といった課題解決につなげたい」。

 先進施設園芸のハウスプロジェクトは2016年11月に、総務省の「平成28年度IoTテストベッド事業」において、交付金対象の一つとして採択された。

 同テストベッドでは、ヤンマーが自治体から耕作地を借り受け、センサーや水耕栽培システムなどの機器や通信設備を用意する。

 IoTサービスを手掛ける複数の事業者とテストベッドを共用し、遠隔制御で収集したデータから農作物の収穫時期や収穫量の予測、将来的には農作物の生育状況をクラウドで一元管理する技術開発や実証を進めている。

 テストベッド構築におけるパートナー企業はAWSに加え、IoT向け通信サービスを提供するソラコム、分散データ処理ソフトApache Sparkを活用したデータ分析基盤「Impulse」を提供するブレインズテクノロジーなど、多数のIoT、AI関連企業が名を連ねる。

 IoTを活用した施設園芸ハウスプロジェクトが発足したのは2016年4月のこと(図2)。

図2 AWS活用の主な経緯
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